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有りがたうさんのleylaのレビュー・感想・評価

有りがたうさん(1936年製作の映画)
3.8
昭和10年、伊豆の天城街道を行き来する路線バスを舞台に運転手と乗客たちとのふれ合いを描く。川端康成の短編を清水宏監督が映画化。セットでの撮影がほとんどの当時の日本映画界でオールロケなのが驚きです。

天城峠の崖道が怖っ!撮影は大変だったんだろうと推測します。実際にバスの運転手役の上原謙さんの運転がヒヤッとするシーンもあったのだとか。

峠を通る商人や村人たちと通りすがるたびに「ありがと〜」と声を掛ける上原謙演じる運転手が、男前でいい人だからモテます。みんなから慕われます。人々が交わす会話から、当時の日本の貧困さが伝わる。

貧しくて東京へ奉公に行く娘と運転手との淡い恋心が奥ゆかしい。人生経験豊富そうな黒襟の女性(桑野通子)と髭のおじさんとのやりとりが皮肉っぽくて面白い。一見楽しげな音楽と会話から、ほのぼのとした雰囲気が漂うけれど、暗い世相が人々の心を蝕んでいるようで、切なさが残る作品でした。
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