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殺し屋は放たれたのイワシのレビュー・感想・評価

殺し屋は放たれた(1956年製作の映画)
4.0
眼球そのものが肥大化したような分厚い眼鏡をかけたウェンデル・コーリーの顔が突発的に映される法廷での切り返しが強烈。クライマックスもまた視線劇で、背中ごと射抜くような視線をヒリヒリと感じる刑事の妻が夫に一瞬の目配りを送り、同時多発のアクションが巻き起こる。

撃たれること、飛び込むこと、身を翻すこと、倒れること。複数のアクションが同時多発的と言っていいほど一瞬のうちに起こり、終息するクライマックス。冒頭のアクションがさらに圧縮され、横たわるウェンデル・コーリーの妻と抱き上げられるジョゼフ・コットンの妻が対比される。

クライマックスの追跡/接近劇に『パブリック・エネミーズ』を想起。ウェンデル・コーリーの絶命の様子は『パブリック〜』のスティーヴン・グレアムのように地面に倒れるまで銃火の光が夜に閃く。

小道具としての犬の使い方が絶妙。ウェンデル・コーリーが脱走に使ったトラックを近くの農夫の家の前に止めると犬が駆け寄ってくるのだが、次の検問のシーンでその犬を映すことで犯人が街に侵入したことを簡潔に示し、クライマックスでまた犬を登場させることでサスペンスを生む。
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