佐藤克巳

続南の風の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

続南の風(1942年製作の映画)
5.0
戦後自由謳歌を讃美した獅子文六は戦中の最中でも、清水宏「信子」に続き本作に於いても清々しい青春の息吹を歌い上げた原作を提供していた事に感銘を受けた。自由は決してアメリカさんから頂いた物ではなく、日本独自に萌芽した物であって、西郷隆盛の敬天愛人を見事に表現した雄大なコメディ映画の傑作に仕上げた吉村公三郎監督の手腕にも驚嘆した。元男爵家母葛城文子が、道楽息子佐分利信と娘文谷千代子を郷里鹿児島に墓参りに誘い、西郷研究家叔父斎藤達雄に佐分利の修練を依頼した。佐分利は、自分は西郷の影武者の末裔を知り誇りを抱いて帰京する途中、シンガポールでの友人笠智衆と出会い西郷を教祖とする新興宗教に被れる。が、一役買った宣伝マン日守新一に騙され、来日した布教家斎藤達雄は妄想癖があり、笠もマラリア患者時の錯覚に幻惑されていた。佐分利は、再起を期し笠と共に南に下る。許嫁となったおでん屋娘高峰三枝子もその後を追う。なお、斎藤のアレック・ギネス張りのメイクとギャグセンスの素晴らしさは賞賛に値する。
佐藤克巳

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