安堵霊タラコフスキー

恋ざんげの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

恋ざんげ(1952年製作の映画)
2.0
良くも悪くも、というか主に悪い意味でとことん小説的な映画

この中編映画はタイトルの通りある恋に関する恐怖体験をした男の話なのだけど、台詞は男のモノローグのみで会話が一切ないという、さながら一人称小説を映画にしてみたという作品で、そこに実験的精神は感じられた

しかしそのモノローグがあまりに説明的すぎて想像の余地が減じており、映像も暗くて平板で、あえて暗い画面にして見せないという手法を取る作品もあるのだけどこの場合単純に撮影技術が拙いようにしか思えず、初々しいアヌーク・エーメの妖艶な所作は良かったけど全体的に不出来な感は否めなかった

加えて前述の実験性も、同じくモノローグのみだけど動画ではなく静止画で表した傑作SF短編ラ・ジュテやモノローグと映像を敢えて乖離させたインディア・ソングに代表されるマルグリット・デュラスの諸作品、そして全編台詞なしの裸の島と比べると中途半端と言わざるを得ず、そういった実験的要素でも引けを取る点に作品の脆弱性を覚える

しかし先に例を挙げた実験映画はどれもこの作品が作られた後の映画で、これら実験映画の先駆的作品となっている点は評価すべきかもしれないが、ここで挙げたものが現代でも瑞々しさと衝撃を失わない傑作ばかりということを考えると、作品として一歩も二歩も劣っていると言わざるを得ない