櫻イミト

サタンの書の数ページの櫻イミトのレビュー・感想・評価

サタンの書の数ページ(1919年製作の映画)
3.5
ドライヤー監督の2作目にして157分の超大作。原作小説「サタンの嘆き」を大幅に翻案。神に命じられたサタンが悲しみながら人間界に悲劇をもたらし続ける4つの時代の物語。①キリストの悲劇②魔女裁判の悲劇③マリー・アントワネットの悲劇④現代ロシア革命の悲劇。

ドライヤー監督は1作目「裁判長」(1918)を完成した直後に、アメリカのグリフィス監督「イントレランス」(1916)を初めて観て感銘を受け(特に現代パート)、同様に不寛容をテーマとした歴史大作に着手した。

演出手法的にはクローズアップや救出劇の切り返しモンタージュ、構成的には四つの時代に渡る大歴史絵巻と、「イントレランス」からの直接的な影響が随所にみられる。しかし同じ歴史絵巻でも“神”の存在をベースにしているところがドライヤー監督ならでは。

サタンは各時代の人間社会に変装して紛れ込み悪事へと誘惑するのだが、これは神がサタンに与えた罰で、人間が誘惑に勝てない限りサタンは人間の不幸を見続けなければならないというもの。この設定によって歴史上の悲劇が神話として再提示され、観る者にも判断を迫る、“聖なる悲劇絵巻”とでも呼ぶべき一本となっている。

ドライヤー監督の第1作目「裁判長」と同じく、随所に猫、犬、鳥と動物たちが登場するのも特徴的だった。
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