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ブラザーズ・ブルームのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ブラザーズ・ブルーム(2008年製作の映画)
3.3
 アメリカのとある場所、詐欺師が結婚し、2人の男兄弟が誕生する。10歳の弟ブルーム(ザカリー・ゴードン)と13歳の兄スティーブン(マックス・レコーズ)とは互いに友人のいない仲良し同士だった。ブロンドの女の子への幼いブルームの恋、洞窟の奥には光があると力説した彼は信者を引き連れて洞窟の奥へ分け入るが、そこには奇跡的に光が差し込んでいた。だがブルームは微かに兄スティーブンの姿を目撃する。常に弟の話には兄が色を付けてお膳立てをしていたのだ。25年後ベルリン、大きく成長した詐欺師兄弟のブルーム(エイドリアン・ブロディ)とスティーブン(マーク・ラファロ)。彼らは子供の頃からカモを見つけては金を騙し取り、世界中を旅する生活をしていた。25年の月日が経ったある日、弟のブルームは嘘で塗り固めた自分の人生に嫌気がさし、詐欺師を辞めモンテネグロで生活を始める。しかし兄スティーブンと仲間のバンバン(菊地凛子)に居場所がばれ、新しい仕事の話を持ちかけられる。「これを最後に詐欺家業から足を洗う」という約束で渋々引き受けるブルーム。そしてニュージャージーに住む天涯孤独の大金持ち、ペネロぺ(レイチェル・ワイズ)から金を騙し取る計画立てる。

 詐欺師がこれを最後に足を洗うと、人生最後の犯罪計画に選んだ物件がとんでもない計画だったというのはよくある話だが今作も例外ではない。自転車事故を装い彼女に近づくブルームだが、あろうことかカモであるペネロペ・スタンプ(レイチェル・ワイズ)を好きになってしまうのだ。石油王の娘にして、ニュージャージーの大富豪、おまけに幼い頃に母親の介護をし、世間を知らない籠の鳥という設定はやや荒唐無稽なものの、彼女の生い立ちは決してブルームのこれまでの歩みとも無縁ではない。物心ついた頃から、スティーヴンの入れ知恵で悪に手を染めてきた彼は、35歳になるまでブルームではないかりそめの人物を次々に演じて来た。だがそのことが元で「筋書きのない人生を送りたい」と決意したブルームは兄の元を離れ、たった1人で生きていくことを決意する。風光明媚な各都市を優雅に旅歩く物語はピカレスクな輝きを帯びるものの、敵役やインターポールの要素は交えずに、謎のベルギー人マクシミリアン・“キュレーター”・メルヴィル(ロビー・コルトレーン)だけを配する。33歳の世間知らずのお嬢さんに気付きを与えた初老の男だったが、雷の音に欲情したヒロインはプラハの罠にも動じることはない。筋書きのない人生と175万ドルの身代金と兄の命、両者を天秤に賭けたブルームはあっと驚く最後の行動を仕掛ける。どこか弾けない単調な展開はやや難があるもの、エイドリアン・ブロディにマーク・ラファロ、レイチェル・ワイズに菊地凛子と若手注目株を起用したキャスティングは素晴らしい。
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