猫脳髄

ゾンビ3の猫脳髄のレビュー・感想・評価

ゾンビ3(1979年製作の映画)
3.3
年末年始ユーロ・ゾンビ特集1/7~イタリア編①

リリース年は1981年である。アンドリュー・B・ホワイトこと、アンドレア・ビアンキによるマカロニゾンビ。ナンバリングタイトルを冠したパチモン「ゾンビ」がそれこそゾンビのごとく湧いて出た時代なので、本気でカウントするのはやめておく。

ロメロ・ゾンビが生存者の行動様式の変化に焦点を絞ったヒューマン・ドラマであるのに対し、イタリア式はとにかくどれだけ残酷かつ派手に人間をブチコロすかのゴア描写に全振りするエクスプロイテーション型と特徴づけることができる。

本作は「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(1968)式にとある館(※1)に生存者が立てこもり、そこにゾンビが押し寄せる基本形をとっている。古代エトルリアの呪文を唱えてしまったためゾンビが復活するが、これが「サンゲリア」(1979)タイプのオクサレご一行なのである(※2)。しかも最初は鈍足で迫るのみだが、何と手持ち武器を使いこなすうえに、一致団結して丸太を用いて扉を破壊しようとしさえする。どんどん賢くなってしまいにはみんなして変装し、生存者を誘い込もうするなどもはやノーリミットである。

「サンゲリア」の名シーンを丸パクリするなど臆面もないが、さらに、規制逃れのために登用した子役代わりの低身長の成人俳優が極キショのマザコンを演じており、その容貌と合わせて不気味で仕方がない。ビアンキは近親相姦テーマを各作品に埋め込んでおり、本作でも実に奇形的に描写されたということらしい。クライマックス(※3)でゾンビ化したマザコンが母親の乳首を噛み切るシーンで不快度は頂点に達する。

唖然茫然のトンデモ作品だが、イタリアならではのシナリオ軽視・描写重視のやりすぎゴア、不快がらせることを目的にした悪意のゾンビ映画としては歴史に名を残した。どこか中毒性のある怪作である。

※1 憎たらしいのは、さすが文化遺産の国イタリアで、ヴィラ・パリ―ジ(Villa Parisi)という本式のヴィラや博物館で撮影している。ヴィラ・パリ―ジはマリオ・バーヴァやポール・モリセイらも撮影場所に選んでいる由緒ある館
※2 特殊メイクに予算を全振りしたため、ほとんど素人俳優しか揃わず、演技はひどいものである
※3 セットが「インフェルノ」(1980)の使いまわしである。言われてみれば…
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