フジタジュンコ

マイネーム・イズ・ハーンのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

マイネーム・イズ・ハーン(2010年製作の映画)
3.9
これもアホほど泣いてしまった…シャー・ルク・カーンのすごいところは、見るたび「好き」という感情が増えていくところ…一番最初に見たときは「パッとしねえオッサンだな」とか思ってごめんね…

さて、内容は非常にシリアス。”9.11”以降のアメリカにおけるイスラムコミュニティの受難を通して、「その人がそうであること」(”My name is Khan”)の尊さ、「そうであること」への愛を描いている。
ジョーハル監督の「歌と踊りを捨てる」という信念(と、在外のインド人と我々のような外国人に向けて)に基づいているが、劇伴が非常に良くて歌詞もわからないのに泣けてしまう。

迫害によって自身のアイデンティティを捨て去らねばならないことの悲しさも同時に描かれるが、終盤で、イスラム教徒の大学生がヒジャブをつけて、「これが私である」とクラスメイトに主張するシーンが印象的。仏教徒のもとで育った私は無宗教であると自認しているものの、食事のときはお米を一粒たりとも残さないし、お天道さまが見ているから悪いことはしない。ヒジャブをつける女性もそうなんだろうと思う。

主人公のハーンが大統領に会うためにアメリカ全土を放浪するロードムービーでもあり、その旅の景色は非常に美しいし、貧しい黒人の地域で出会ったママジェニーの底抜けの明るさにはほっとさせられる。結末は「そうはならんやろ」というむりやりなハッピーエンド感はあるが、でも「そうあったらいい」という希望が残る作品でした。