がちゃん

宇宙人東京に現わるのがちゃんのレビュー・感想・評価

宇宙人東京に現わる(1956年製作の映画)
3.2
日本初の空想特撮カラー映画として記念碑的作品。

脚本を、『七人の侍』『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』などの黒澤映画でおなじみの実力派、小国英雄。宇宙人「パイラ星人」のデザインを岡本太郎が担当したりしていて、なかなか贅沢なスタッフです。

全国各地で空飛ぶ円盤の目撃が次々と報告されるが、学者たちは、科学的証拠がないことからその正体を突き止めることができなかった。

そして、その円盤に乗ってきたと思われるパイラ星人が人間の姿に変身して地球人と接触しようと試みる。

パイラ星人の目的は、地球上で次々と繰り返されている核実験の中止と核兵器の廃絶を求めることだった。

そんな中、宇宙の彼方から超巨大な天体Rが地球めがけて接近してくる。

全世界の核兵器を使用してRの破壊を試みるように、日本の科学者たちは求めるが、核保有国は沈黙を貫き協力しようとしない。

いよいよRが接近してきて、地球は灼熱地獄となり暴風雨が発生するなど天変地異が発生するのだが・・・

あらすじはこんな感じです。
米ソ冷戦時の核競争への批判が込められているのがよくわかります。
地球の滅亡を防ぐために核兵器の供給を保有国が拒むのは、両国のけん制があるのかなという風に思わせますね。

パイラ星人が東京にやって来たのは、地球で唯一の被爆国であるからというちゃんとした理由があるのもいいです。

現在の特撮技術からしたら物足りなく思えるかもしれませんが、特撮もなかなか頑張ってますよ。
衛星接近でパニックになる描写もいいですし、その後、誰もいなくなった東京の街の静かで不気味なムードはなかなかいいです。
スタンリー・クレーマー監督の、『渚にて』(1959)を連想してしまいました。

地球に向かってくる天体をなんとか破壊しようというテーマは昔から繰り返し作られていて大ヒットした『アルマゲドン』や『ディープインパクト』などもこの系譜ですね。

まあ、ヒトデを擬人化したような岡本太郎デザインによるパイル星人の集合のシーンは、正直笑ってしまうんですけど。

また、東京の街がパニックになって大人たちは子供を置いて疎開するのですが、どこに逃げるのだろうとか、核兵器発射から天体到達の時間があまりにも早すぎるだろうとか、細かいツッコミどころは多いのですが、頑張ってます。

社会風刺も含んでいます。
温かい目で観てあげると意外と興味深く面白い作品ですよ。

がちゃん

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