不在

ベルイマン監督の 恥の不在のレビュー・感想・評価

ベルイマン監督の 恥(1966年製作の映画)
4.6
ベルイマンの映画においての戦争は、影こそ感じるもののはっきりと描写されることは少なかった。
しかし今作は戦争を正面から描くことで、芸術の無力さを際立たせる事に成功している。
劇中の音楽家の夫妻は映画が始まるより前から既に諍いが絶えないようで、その事からも芸術の空虚さを感じさせる。
島に住んでいることや故障中のラジオのエピソードから、2人が俗世間から離れて生きていることが分かる。
そしてラジオが直った途端に、戦争の渦中へと引きずり込まれるのだ。

芸術とはいわば人にだけ与えられた特権であり、人と獣を分つもの。
しかし現実では、芸術家ですら戦争によって獣になってしまう。
観客がこの映画を通して戦争に対する意識を深める事が、芸術の価値を示す方法だ。
不在

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