爆裂BOX

チェックメイトの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

チェックメイト(2009年製作の映画)
3.7
映画学校への入学が決まった青年ヤニック。町を散策していて事故に遭った彼は近くの民家に助けを求めるが、その家の主ジャックによって監禁されてしまう…というストーリー。
フランス産の監禁サスペンス・スリラーです。フランスでベストセラーになった小説が原作のようですね。
映画学校への入学を目前にして課題の為に街を散策して撮影していたヤニックが自転車事故に巻き込まれ、電話を借りようと尋ねた民家の家主ジャックの秘密知ってしまい監禁されますが、そもそもヤニックが血だらけになった手を洗おうと勝手にずかずか家に上がって助けを求める声を聴いてこれまた勝手に二階に上がって監禁されてる男発見してしまうのが発端なのでヤニックの自業自得感ありますね。何もしなかったら普通にジャックがタクシー呼んで帰れてたのかも。
ジャックはタクシードライバーしながら、殺人を行っていますが、快楽殺人のサイコキラーという訳ではなくて、自分を絶対的な正義の人間と信じて麻薬の売人や小児性愛者を標的に殺しており、殺すときも一撃で無用な暴力を振るわず、監禁したヤニックも悪人ではないので殺そうとはしないんですよね。そうはいっても思い通りにならなかったらキレて暴力ふるったり、勝手に後継者認定したりと自分勝手でイカレタ人間であることに変わりないですね。妻モードはジャックの行いに疑問もちながらも、その支配下で逆らえず、長女ミシェルは父親を尊敬し、父親以上に暴力的で、次女アンは障害があるのか喋らず常に無表情(結構美少女ですが)意外にくせ者だったり。前半は監禁されて脱出しようとするヤニックとこの家族のドラマが並行して描かれ、モードがヤニックの説得で心揺れたり、ミシェルが父親の試験に落ちて荒れたりと其々の心情が結構丁寧に描かれてます。
後半、チェスの名人である自分に一度でも勝ったら解放するといわれ、ジャックとヤニックのチェス対決が描かれますが、次第に脱出よりもジャックとのチェスに勝つ事にのめりこんでいくヤニックが面白い。それと同時にジャックの家族も加速度的に崩壊に向っていく様も面白いですね。ヤニックとジャックの対決が白い空間という心象風景の中で描かれ、ジャックが追い込まれると彼の顔から黒い液体が流れ始める映像も面白い。
最後の対決が地下室で行われますが、そこに用意されたモノは中々のおぞましさ。でもジャケでネタバレされてますね。結局決着つかずに終わったのはちと残念。アンの末路には驚きましたが。フランスでは子供がああなる直接描写厳しそうだけど。あんなこと起こった後もジャックに「チェス続けろ」というヤニックのイカレタ感じが印象に残りました。
歪ながらもギリギリの所で成り立っていた家庭がヤニックという外部からの異物で崩壊に向う展開は一種のホームインベージョン物ともいえるかも。
結果的に何もかもなくしたジャックだけど、この体験通してチェスに憑りつかれ、それまでに持っていたもの手放したヤニックも同じか。
地味なサスペンス・スリラーですけど、ドラマ部分もしっかりしていて楽しめました。チェス要素はそんなに重要じゃないです。