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ザ・バニシング-消失-の海のレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
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人は、既知への愛着と未知への好奇心の間でいつも選択を強いられているのかもしれない。この世には、数えきれないほど恐ろしい話が蔓延っていて、それが誰の庭から放された物なのか、特定することは不可能に近い。もはやわたしたちは、本当に怖いものに怖いと感じることさえできず、本当は怖くないものに安堵することさえ侭ならない。地図を持たない旅とは、始まった瞬間から狂い出すしか有り得ないのか、それともどこへ辿り着こうともシナリオ通りだったと言えるのかどうか、この映画の何が「怖い」だろう。 雨が窓を叩くぱたぱたという音の中で観たせいか、なんだかすごく心地良い恐ろしさだった。世の中に、美しく温かなものだけあればいいと願う反面で、そうではないものの存在にすごく救われているときもある。誰かの苦痛を望んでしまうのは、悪いことではない。好きな色の魚は綺麗だ。だけれど嫌いな色の魚が汚いとは言い切れない。誰にも決められない。それは恐ろしいことかもしれない。でもすでに、知っていることだ。
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