ザ・バニシング -消失-(1988)
>「すべての映画の中で最も恐ろしい」
レジェンド級の扱いを受けている
このサスペンス映画の上記コメント
かの有名なスタンリー・キューブリックが今作監督ジョルジュ・シュルイツァーに伝えた
と云われている
冒頭から 主人公レックス・彼女サスキアのやりとりが続き『感情』を強く印象づける
ごく平凡な日常の『普通』が展開されるなか 何かが起こりそうな空気感が漂う
血が飛び出るわけでもなく
ましてや幽霊も出てこない
ただ不穏な雰囲気は常にある
そして
サスキアは突如『消失』する
『感情』を描いていたからこそ『消失』がしっかり効いてくるように仕込まれている
これこそがこのストーリーの肝
そして
不確実性・不条理な『消失』を軸に過去から現在そして未来へ展開していく
第2の主人公 兼 犯人レイモンの心の奥深くに秘めている残酷な願望や純粋な好奇心
それを観衆は見つ目続ける
「消えたサスキアは一体どうなったのか?」
観てる側も主人公レックスと同じ思いに駆られ焦らされる
不気味で静寂な感じが漂い続ける
・サスキアが木の側に埋めた2枚のコインの金色の輝き
・トンネルの真っ暗闇な世界
・トンネルを抜け出る時のヘッドライトの光
・箱の中の真っ暗闇な世界
・手持ちのライターの光
・新聞記事の卵型の2人の顔写真
・サスキアがレックスに誓わせた
「決して離れない」という願い
それらは全てメタファーになっている
最終的にストーリーが明示する
『金の卵の夢』に帰結される
>金の卵に閉じ込められ、永遠に宇宙にさまよう。それは耐えがたいほどの孤独であり、2つの卵がぶつかる時すべてが終わる。
この夢が描き出す重厚感に包まれるラストを体験したが何ともやりきれない気持ちになる
「レックスがサスキアの元に辿り着いた」
と捉えればハッピーエンドだと思う
この作品は
『喪失・執着・愛情・異常・好奇』
が混ぜ合わさった芸術そのものだと思う
まるで寓話のような形で
静かにページを閉じるように
そっとエンドロールを迎える
何故かいつまでも忘れることができないラストだった