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アンディ・ラウの 麻雀大将のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 麻雀で生活をしているアンディ(アンディ・ラウ)は弟のルイスから麻雀大将を決める大会の話を持ちかけられる。麻雀大師・ラウを始めとした凄腕の雀師が揃う中、アンディは大会への出場を決意する。ジョニー・トーにとって初期のアイコンと言える役者がチョウ・ユンファやマギー・チャンだったとすれば、中期に欠かせない役者と言えば、アンディ・ラウが真っ先に挙がるだろう。91年の『レイダース』で出会ってから、『戦火の絆』、『暗戦 デッドエンド』、『Needing You』、『フルタイム・キラー』、『ダイエット・ラブ』と数多くのジョニー・トー作品で主演を務めてきた。アンディ・ラウと言えば初期の頃は『男たちの挽歌』の変奏とも呼ぶべき『愛と復讐の挽歌』やウォン・カーウァイのデビュー作である『いますぐ抱きしめたい』など正統派な2枚目役が多かった。だが『Needing You』あたりからコメディもライトなラブストーリーもこなせる2.5枚目への華麗なる転身を遂げた。今作もアンディ・ラウの2枚目半の魅力が炸裂した作品である。

 アンディは倦怠期のいさかいから、ジジ・リョンに対して一方的に別れを切り出す。主人公は借金を背負っても麻雀に命を懸ける放蕩息子であり、家族はそんなアンディを見放している。しかしぼけた母親の些細な間違い電話から、息子と母親そして弟は感動の対面を果たすことになる。母親は既にボケが始まっており、弟は兄貴のことをあまり快く思わない。だが麻雀で大金を儲け、いまは裕福な生活をしているアンディは、母親と弟に一緒に住もうと提案する。彼は自分の若い時の罪滅ぼしか家族を養おうとするが、血縁のないジジ・リョンにはツレない態度をするばかりである。恋愛と家族との愛情を縦軸とするならば、横軸に位置するのは麻雀のライバルであり、ジジ・リョンの恋敵でもあるラウ・チンワンの存在である。これは『暗戦 デッドエンド』の正しい続編と言えるだろう。アンディと反目する弟が密かに麻雀を学ぼうと顔を出した場所は詐欺とペテンの巣窟であり、その首謀者がお金持ちのラウ・チンワンとその父親と舎弟である。

 彼らは台湾式、香港式、アメリカ式麻雀を巧みに使い分ける詐欺話術で、ルイス・クー扮する弟を巧みに騙してしまう。その手口はまるで『デッドエンド 暗戦リターンズ』でラム・シューを騙したイーキン・チェンのようだが、ルイス・クーは残念ながらその企みに気付かない。ジョニー・トーはこの物語で最初から最後まで、麻雀というのは全てがツキであり、そこに戦術や駆け引きや読み合いは必要無いかのように演出している。クライマックスの日本での麻雀大会の様子は随分と微笑ましいし、呆気なく勝負がついたように見えるが、ジョニー・トーの物語を停滞させない力こそ褒めるべきだろう。ラストは敵味方の構図さえも曖昧になる21世紀のジョニー・トーらしい結びになっている。
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