櫻イミト

コップキラーの櫻イミトのレビュー・感想・評価

コップキラー(1982年製作の映画)
4.0
元セックス・ピストルズのジョン・ライドン×ハーヴェイ・カイテル共演のイタリア製サイコ・サスペンス。音楽はエンニオ・モリコーネ。知られざる傑作カルト。

NY市警の麻薬捜査官を標的にした連続殺人が起こっていた。ある日、汚職で私腹を肥やしているフレッド刑事(カイテル)の秘密高級マンションに、自分こそが刑事殺しの犯人だと名乗るレオ(ジョン・ライドン)が訪ねてくる。彼は富豪の息子でフレッドの汚職の証拠も握っていると語る。フレッドはレオにヤキを入れた上でマンションの風呂場に監禁し対策を練るのだが。。。

かなり面白かった。ジョン・ライドンは、貧弱だが不敵なパンク・スターの存在感そのままにダークヒーローを体現している。対するカイテルの神経質でマッチョな悪徳刑事役もハマり役。強烈な個性の二人が密室を中心に心理戦を繰り広げ、次第に立場が逆転していくのが面白い。シナリオもサスペンスフルに転がっていき物語の先は最後まで読めなかった。やや強引な点もあるが、寓話的な映画として見れば許せる範囲だと思う。

モリコーネによるチャイコフスキーベースのカントリー曲はイメージも意味も暗喩的。レオの祖母役で「暗黒街の弾痕」(1937)のシルヴィア・シドニーが助演しているのも本作の権力へのスタンスが深読み出来る良いキャスティング。文学的な要素が適度に含まれた良い案配のエンターテイメントに仕上がっていると思う。

勧善懲悪を求める向きにはおススメできないが、パンク・ロック魂を持つ者ならば必見のカルトな一本。

※映画秘宝コレクション「悪趣味ビデオ聖書」(2016)に本作が掲載されているが、記事を書いているのが中原昌也氏でガッカリ。ロクに観ないで書いているとしか思えない。
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