そーいちろー

鏡の中にある如くのそーいちろーのレビュー・感想・評価

鏡の中にある如く(1961年製作の映画)
3.8
精神を病んだ女性とその旦那、その女性の父で小説家と、弟の海辺での休暇を舞台に、錯綜とした心理劇が繰り広げられる、ベルイマンらしい作品。

ベルイマンはしばしば「神」や「信仰」についてを映画的に描いた監督とされているが、本作を観るにつけ彼にとって信仰という問題が人間社会においては「狂気」に至ってしまう問題であることを表現しているように感じられた。

また姉と弟の近親相姦的な関係性や父と息子の打ち解けきれていない関係性、創作者たる父親が、父という人間的側面と、職業人としての小説家の狭間で娘というものと、狂気で壊れていく人間を間近に観察し、作品として収めたいという欲求で揺れ動いている様子(この小説家の造形は、どこかベルイマン自身を投影しているようにも感じられる)も描かれて、その閉鎖的でまるで戯曲的なシナリオも含め、物語の密度は高く、完成度は非常に高い。

姉の精神世界をそのまま映像にしたような雨が降る中での船のシーンのところなど、緊密度が凄い。

ラストの崩壊はそのままに、特に誰か救われるわけでもなく、何も解決せずとも物語が続いていく感じも含め、良い映画だった。
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