Automne

たぶん悪魔がのAutomneのレビュー・感想・評価

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)
4.3
ロベール・ブレッソンらしさの塊みたいな映画。
救いのないリアリティ、現実的な路線を独自に(俳優は使わないとか)、静かな暴力性で冷徹に描き続けたからこそ発展してきた彼の作品群の終盤。ドキュメンタリー的な要素が本作ではより増幅していて、新聞のニュースからはじめるモキュメンタリーと、フランス学生運動時代(60年代?)あたりの環境問題や社会問題の映像をそのまま使っているので、かなり目を背けたくなるような描写がある。アザラシ🦭可哀想すぎた🥺

ヴェニスに死す的少年、素人のどこから見つけてくるの?ってくらいキャストの役が板についてた感がすぎょい。
厭世的インテリ美少年は美少年だから許されるのであって、そこらのちょっと頭良い学生であるだけでは成立しないのである。ビジュアルに内在する薄幸の短命という美しさがそこには存在するからで、そうでなければ皮肉が効きすぎていて共感できるキャラクターではなくなっていたろう。

死に向かって収束していく感じは、『少女ムシェット』『バルダザールどこへゆく』『湖のランスロ』など他のあらゆるブレッソン作品に共通する要素であり、ブレッソンのやりたかったのは、特定の死に向かって滅びゆく人間のその過程なのかなあと何となく感じた。
画面作りが良いのと主人公の妖艶さ、当時の時代の空気感があってそれだけでも十分楽しめる。良作です。
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