オクターヴ

たぶん悪魔がのオクターヴのレビュー・感想・評価

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)
4.8
いや、もう劇場(シネマカリテ)から出て、新宿の都会の喧騒がサイレントになるくらいの衝撃的な終わり方。結末は知らされているから、わかっていたことなんだけど、あのラストシーンは焼印のごとく記憶に刻まれる。その衝撃は酒場から、いや、あのパイプオルガンあたりからジワジワ…生活感がまるでない。冷蔵庫の中身も、テーブルに置かれた料理も、すべて日常とは思えない。日常を排除している分、浮き上がる人々の動きが際立ってくる。抑制した結果、獲得したものは映画に隠された細部の輝き。そこに魅せられつつも、無力感と絶望感だけしか瞳には映らない。淡々とした無感情な演技なのに出てくる俳優がみんな最高に美しい。これはブレッソンの発明なんだと思う。また、「ラルジャン」前夜の映画を2022年の日本の劇場で観れたことは、まさに奇跡であり、至福であった。