くまちゃん

エクストロのくまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

エクストロ(1983年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

クリーチャー造形だけで一見の価値はある。
地球外生命体が地球や人間を侵略しにくる話はよくあるが、今作はその中でも特にミニマムと言える。
父親が息子を迎えに来るだけの話だからだ。

光に包まれ、父親であるサムが連れ去ら   れた過去は幼いトニーの心に深い孤独を与えた。
トニーが母の元を去ったのは、地球外生命体のせいではなく、自らの意思によるものなのかもしれない。

玩具の兵士が部屋に侵入し襲ってくるさまは無機質な光沢と無表情が相まって恐怖外の何物でもない。
脱走したペットの蛇が殺された恨みが引き金となり子供の純真な心が暴走する。

女性に種子を植え付け、大きく膨らんだ下腹部からサムが産まれるのも、
アナリスの下半身に生えた卵管から産卵するのも、目を覆いたくなるほどの気持ち悪さ。
ちなみにアナリスを演じたマリアム・ダボは今作でデビューし4年後には「007 リビング・デイライツ」にてボンドガールを努めた逸材である。

ゴア描写は痛みはないが嫌悪感はしっかり感じさせる。
血の色や内臓や肉片など時代もありそこまでリアルではないからだろう。
だが、それが何を意味しているのかは的確に理解できるため嫌悪のみが残る。

アナリスの卵から産まれた「何か」がレイチェルの口へ種子を産み付ける場面で今作は幕を閉じる。
その「何か」の造形は、見るからに男性器を模しており、気持ち悪さが際立つ。
クリーチャーの受精と人間の性行為が同時に描かれているため「性欲」そのものに対する拒絶や潔癖のような意思が感じられる。その価値観を否応なしに押し付けてくる。それがこの不快感の正体か。

全体的にサスペンスフルでミステリーでもあり、ヒューマンドラマでもある。
クリーチャー造形と恐怖を煽る大喜利におさまらなかったところが今作の優秀な部分だろう。
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