映画を見る猫

血の映画を見る猫のレビュー・感想・評価

(1989年製作の映画)
5.0
ペドロ・コスタ鑑賞記録①
これが処女作。この事実だけで、ペドロ・コスタの才能に驚嘆の一本だった。
この人は間違いなく映画狂だなという確信の種は、至るシーンで芽吹き、静かな感動となって花開く。音、断片、省略、モンタージュ、陰影に至るまで。これはフラーか、あれはブレッソンか、ゴダールにカラックス、オリヴェイラにやはり溝口か。
そんな野暮な見方に答えがあるはずもない。その幾つもの参照は決して単色としてではなく、よく練られた混色として独自の画を成すまでに昇華していた。まず見事。
幾重にわたる美しい画の数々に、後半はフィルムノワールの香りを嗅ぎながら、さまよう子供の瞳に『狩人の夜』を思い出すばかりである。
しかし『ヴァンダの部屋』でコスタを知った身としては、或る意味嬉しい驚きに満ちた一本でもあった。どうでもいい感想としては、ヒロインが香椎由宇に見えて仕方なかった。さて残り二本、『溶岩の家』と『骨』の鑑賞が楽しみだ。