horahuki

新デモンズのhorahukiのレビュー・感想・評価

新デモンズ(1990年製作の映画)
3.6
「知りたがり」が命取り!

ルチオフルチ監督によるオカルトホラー。フルチの中でも不出来だと良く批判されてるようですが、フルチらしい居心地の悪い空気感が漂った面白い作品だと思いました。

シチリア島がロケ地となっているため、只でさえめちゃ綺麗でオシャレなのに、(恐らく意識してだろうけど)そのポテンシャルをさらに引き出すように快晴の青空のもとで撮影されてるからこそな観光したくなるような明るい舞台が、その裏にある気味が悪くて真っ暗な地獄のような悍ましさを対比的に際立たせている。

発掘調査のためにシチリア島に来ている主人公のライザたちは、地元市長にも全く歓迎されず、ヤバそうな肉屋の兄ちゃんにも詮索するなと釘を刺される。そんな人々の閉鎖的なムードの中、「過去は死だ。死を呼び覚ますことなかれ」というセリフに代表されるように殊更に何かを隠そうとする住人たちの言動が不穏な空気をさらに煽ってくる。

「抗えない何か」に引き込まれていくキャラクターはフルチ作品では良く見られますが、本作の主人公ライザも同様。住民たちが必死になって隠そうとする「過去」そして「彼方」を降霊術によって宿してしまったライザは、明るさの中に隠された街の深淵なる闇へと誘われるように歩を進めていく。

人間としての最終ラインを突破してしまうことを暗示するかのように、人間的な営みに対して耳を閉ざしたり、広大なスタジアムみたいな広場の上と下に陣取ったキャラ同士の会話といった象徴的なシーンは主人公ライザの内面の争い(というか過去と未来のせめぎ合い)なのだろうし、特に後者の異様さを感じる映像の凄みが鳥肌立つレベルでカッコイイ!

プロローグで示されるように、本作はフルチお得意の異界への扉を開けてしまうお話なのだろうし、開いてしまった扉はそう易々と閉じることはなく、開けた者を依代として貪り尽くし、彼方側から流れ出てくる「異界」はシチリアに住む人々を引き摺り込んでいく。封じ込められた忌まわしい過去とそれに(物理的にも心理的にも)蓋をすることで必死に彼方側に抗おうとする人々はクトゥルフ神話のような閉塞感を映画全体に纏わせているし、大元にある彼方との淫靡な交わりが気味の悪さを増長させている。

ネコによる眼球責めとか、縦真っ二つに裂けてしまうオッサンとか、量は多くないけど質高めなグロもしっかりと用意されてるし、遊んでるだろ…と思っちゃうようなズームインアウトの多用とか、広大な風景を切り取った後に急激に顔へと寄っていくカメラとか、イタリアホラーって感じで大好き!

多くは語らず提示された情報から浮かび上がる背後を匂わせる程度にとどめてるのが本作の魅力なわけだけど、それがクトゥルフ(というかラヴクラフト)の面白さなんだから本作の方向性は正解だと思う。フルチ作品は、クトゥルフモチーフの中でもアーサーマッケンとかの古典怪奇小説よりな空気感が漂っていて今のところツボ率高いです。
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