柳之貓

翼のない天使の柳之貓のレビュー・感想・評価

翼のない天使(1998年製作の映画)
4.2
子供と動物は生まれながらの役者だと言われるけど、これはとても良かった。

子供の主観やモノローグで進む物語なので劇的なストーリー展開はほとんど無いけど、等身大の子供の目線で世界を描きだせているのも素晴らしかった。

愛する肉親との別れによって、この世界に認識の目を向け、目覚めを知ると言う内容だけど、それがとても微に入り妙なるもので、あたかも本人が実感した事で重要視してしまってる些細な事のようなものだから、大それたものでは無いかも知れない。

結局は自分の見方が変わっただけで世界はそのままなんだけど、各人にとっては自分の見方=世界の全てなので、それは劇的な変化であるはずだ。そのような微妙なものを映画という客観で描き出す事ができたのが素晴らしい。

子供の世界ってものは大人社会ほどしっかりされて無く見えるけど、みんな能天気に振る舞ってるわけじゃなく、そしてそんな中に潜んでいる神性…"小さい頃は神様がいて"って歌詞をふと思い出した。
原題はより本質的だけど、叙情的な邦題も振り返って見れば良く思える。

舞台になっている学校とは、子供にとっては抑圧の象徴かも知れないけど、それが時にユーモラスに描かれていて、そんなに悪いものじゃないって語りかけているようで、作り手の人間味を感じられた。

『ホームアローン』みたいな90年代の雰囲気には時代を感じさせられたけど、音楽やシーンの使い方も効果的で、何度かグッとくる場面があった。

こんな作品を生み出せた監督と、意図を理解して協力した制作側、そして描き出せた全スタッフは、3度目になるが、素晴らしいと、思わされた映画だった。
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