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鳥の島の財宝のヨークのレビュー・感想・評価

鳥の島の財宝(1952年製作の映画)
3.7
チェコスロバキアのアニメ監督カレル・ゼマンの長編第一作目となるのがこの『鳥の島の財宝』なのであるが、いやー面白かったですよ。というか長編第一作目にしてすでにパペットアニメとしての完成度は非常に高くて、技術的にはすでにこの時点で天井まで行っていたんじゃないだろうかという気がする。カレル・ゼマン初体験だったがいいもん観たなぁ。
お話は分かりやすくてまるで子供の頃に母親に読んでもらった絵本のよう。とある島の近海で見つかった財宝を巡って人々が争い合うのだが、さてその財宝の行方やいかに、というものである。
簡素でありながらも子供向けにちょうどいいような教訓は分かりやすく提示される。かなり直球に共産主義的なメッセージではあって「巨大な富を独占しても不幸になるだけで、日々真面目に働いて獲る糧こそが幸せを運んでくるのだ」というもの。ちょっと苦笑してしまうほどに前世紀の左派的理想主義だが、まぁ子供にとって有害というほどのものではあるまい。その労働賛歌と共通する部分ではあろうが本作は様々な職業の人間がアニメーションで生き生きと描かれていて、その描写は面白かったなぁ。しかしその辺の共産主義的な思想はカレル・ゼマンが元来持っていたものなのか、当時のチェコスロバキアで作品を作る上で盛り込まねばならないものだったのかは分からないが、それらも悪銭身に付かず的な訓話として料理されているのでそこまで鼻につくものでもないと思う。
あとはタイトルにもある鳥かな。全編通じてたくさんの鳥が出てくるけどその動きや造形が素晴らしい。ペリカン最高だったな。
冒険のワクワク感と児童向け作品としていい塩梅の教訓が上手く混ざっていていいんじゃないですかね。昔読んだ絵本や児童文学みたいな雰囲気で面白かったです。
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