爆裂BOX

戦慄!プルトニウム人間の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

戦慄!プルトニウム人間(1957年製作の映画)
3.5
プルトニウム爆弾の実験で被ばくしてしまったマニング中佐は、全身が巨大化し始める。婚約者のキャロルも駆けつける中、陸軍は事態を隠蔽する為に彼を隔離するが…というストーリー。
何でも巨大化させてしまう映画を撮る事から「Mr.BIG」の異名を持つ、バート・I・ゴードン監督による巨人になってしまった男を描いたSF映画です。
プルトニウムの影響で骨髄に異常をきたし、成長を促進するホルモンを異常なほど分泌する為成長が止まらなくなったマニング中佐。心臓だけが巨大化する速度が遅く、全長が大きくなるにつれ心臓の発作に襲われるようになる。ある日、発作に耐え切れず軍の施設を脱走した彼は、ラスベガスの街を恐怖に陥れる、という内容です。
見る前は巨大化してモンスターと化した中佐が暴れまわって町を破壊するような映画かと思いましたが、実際は放射能の影響で巨大化する身体に苦悩する姿と、それを支え続ける婚約者の姿を描いたドラマ性の高い作品でしたね。
プルトニウム爆弾の実験中、爆心地付近に墜落したセスナ機の乗員を助けようと自らの命も顧みずに塹壕から飛び出して爆発に巻き込まれて体に異常が起こるという理不尽な運命が悲しいですね。全身大火傷を負うも、翌日には新しい皮膚になりそこから巨大化が始まっていきます。昏睡状態から目覚めて、大きな病室の様子から自分が巨大化した事悟ってパニックになる様子や、食料を運んでくる兵士が怯える様子見て余計に苛立ったり、理不尽に体が変容して社会から受け入れられない存在になった苦悩と、それによって精神のバランス崩していく姿じっくり描けていたと思います。そんな彼に寄り添って慰め、医者から「帰った方がいい」と言われても、やさぐれたマニング中佐から心無い言葉投げかけられても彼を支える為に傍に居続ける婚約者キャロルの姿は美しいですね。
軍の施設の大きな病室→サーカスのテントと収容される場所が変わる事で彼がドンドン巨大化している事を分かりやすく表せてると思います。合成技術は今見るとチープな所ありますが(マニング中佐の身体透けて向こうの景色見えてたり)、それでも巨大化した中佐と普通の人間とが一緒の画面に映るシーンなどはよくできてるんじゃないでしょうか。
軍の施設を脱走してからも、道路の真ん中に座り込んで泣いてる所を通りがかった一般人に目撃されたりと暴れるシーンはないです。終盤になって漸くラスベガスの街に現れますが、そこでもノシノシ街中歩きまわって入浴中の美女窓から覗き込んで窓小突いたり、王冠やハイヒールなどのオブジェ持ち上げたりして街を破壊して暴れまわるシーンはほぼないんですよね。警官に撃たれて木や看板投げたりするくらいで。
最後に軍医殺しちゃいますが、あれも治療薬入ったデカイ注射器ぶっ刺されて反撃したからで正当防衛みたいな感じなんですよね。持ち上げた婚約者も説得に応じて解放しますし、人間性無くなったモンスターとしては描いてないんですよね。婚約者掴み上げる所は「キングコング」オマージュか。
モンスターじゃなく犠牲者という感じが強いだけにラストも悲劇的な感じが強いですね。
巨人が暴れまわって街破壊するモンスター映画期待すると物足りないと思いますが、普通の人間が突然巨大化する悲劇を描いたドラマ性の高い作品で楽しめました。