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戦慄!プルトニウム人間のhorahukiのレビュー・感想・評価

戦慄!プルトニウム人間(1957年製作の映画)
3.4
これは何に対する罰なのか…

プルトニウムの爆発実験の秒読みしてる時という「なんで今やねん!」なタイミングで実験場に不時着したパイロットを救おうとした中佐が爆発に巻き込まれ全身大火傷…。でも次の日には火傷が完治し、今度は体がどんどん大きくなってしまうSFホラー。

BIG監督による反核怪獣映画。ジャケの雰囲気的に、デッカくなったオッサンが軍隊とバトルする系のモンスター映画なのかと思ってましたが、巨大化したことによる中佐の苦悩を描くことに重きを置いた静か目な作品でした。

クローネンバーグは精神による肉体の変容を描いていましたが、本作はその逆で、肉体の変容が社会規範からの後戻りのできない逸脱を決定づけ、それにより精神をも蝕んでいく恐怖を描いていました。そしてそれは本作のような極端な変容に限らず、現実でも起こる可能性が極めて高い事柄なわけで、反核に留まらない身近な日常に潜む現実的で理不尽な恐怖という普遍性に繋がっていました。

危険だからと止められたにもかかわらず人命優先で動いたがために起こってしまう身体変容。自分の命を賭してでも目の前の人間を救おうとする損得勘定度外視な純粋な善行がもたらす悲劇。結婚式という未来への希望を目前にして、その全てが一瞬で崩れ去ることの絶望感。そりゃ心病みますわ…。

巨大生物の合成映像は流石のBIG監督で、チープさは感じるんだけど、それなりに説得力のある映像でした。恋人を掴んで…というところは『キングコング』のようだったし、中佐から見た『ガリバー旅行記』のような感覚も表現していて面白かったです。

そんな感じで、かなり真面目な作品なのですが、巨大化した中佐の顔のドアップが多用されていて、変顔してるわけでもないんだけど、だらしのないお腹と合わさって笑っちゃいました。ニュースキャスターの名前がH.G.Wellsを思わせるような名前だったり、チョコチョコとユーモアを感じさせるところもありました。

普通に一件落着的な感じで終わったのに、続編はどんな感じでスタートするのか気になる(笑)近々『巨人獣』の方も見てみようと思います。ジャケ見た感じだと次こそは大暴れしてくれそう!
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