よねっきー

デート・ウィズ・ドリューのよねっきーのレビュー・感想・評価

デート・ウィズ・ドリュー(2004年製作の映画)
4.6
「子どもの頃から憧れる女優とデートするため、成人男性3人が奮闘!」という楽しげなあらすじから予想する通り、ゼロ年代初頭らしい軽薄なノリのドキュメンタリーだ。しかし意外にもというか、なかなか緊張感のある映画で良かった。プレミアに潜入するためにパスを偽造するくだりとか最高。勘でパスのデザイン作んな。

やはり少ない予算は人間をクリエイティブにするなあと実感。「家電量販店の〈30日間ビデオカメラ無料お試しキャンペーン〉中に映画を撮りあげる」という何ともケチなアイデアが、映像ひとつひとつを尊いものにしてくれている。構図の優れたショットなんざ無いに等しいが、「映像を撮る」ということに対する喜びはこれ以上ないほど伝わってくる。ビデオカメラを返却するところは撮りたくても撮れないから、なんだか寂しい。「撮れない」によって、「撮れる」の価値を再認識させるのは、ドキュメンタリーならではかも。だからこそ、最後にブライアンが貰うプレゼントに胸が熱くなる。

ドリューに急接近する「月面着陸」の瞬間も、監督同士が歓喜に震え(おそらく)ハグする瞬間も、決定的な瞬間は何ひとつマトモに撮れていない。それでも、映画の中にその瞬間は収められているのだ。

家庭用ビデオカメラはあるけど撮るにはテープが必要だったり、インターネットはあるけど今ほど普及してなかったり、VHSとDVDが共存してたりと、何かと「過渡期」だったあの時代独特の大らかさが映画の中に記録されている。そういう不便なひとつひとつが、映画を面白くしているのも良かった。何かとややこしいSNS時代の今、同じような企画をやるとしたら、さてどう面白くやろうか。
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