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エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPEのBalthazarのレビュー・感想・評価

4.5
ブラジル社会の教科書。

ジョゼ・パジーリャ監督「描かれていることが、今まさにブラジルで起きていることなんだよ。ただ、このような大作を製作することになったのは、これまで真のブラジルを描いてきたからでもあるんだ。それは(最初に製作した)ドキュメンタリー映画『バス174』から始まった。そして今作では、政府と汚職警官の癒着を描き、なぜこれほどリオデジャネイロで犯罪が多いか、これら作品を観ればよくわかると思うんだ。だから、急にスケールの大きな映画を製作したわけではなく、これまでの作品を通して、徐々にスケールの大きな作品を製作してきたわけなんだ」

 「ドラッグディーラーも、まず警察と取引し始めるんだ。つまり、警察がドラッグディーラーの売り上げの一部をもらうわけだ。だから、警察もどのドラッグディーラーたちが、どこに住んでいるかわかっているのに、彼らを捕まえない。だが、そんな汚職警官の中でも最も悪なのが、そんなドラッグディーラーさえ排除して、汚職警官自身がそのファベーラでまるでマフィアのように街を支配して、そこで居住する人々を脅迫してサイドビジネスをやることなんだ。そのビジネスもミネラルウォーターやガス、インターネット、交通、さらにCATVネットワークや消費者金融にまで及び、そのうえもっと問題なのは、選挙の投票まで支配しようとすることだ。そういった汚職警官が政府と繋がっていることが、ブラジルで今いちばん問題なんだよ」

「この映画に出てくる多くの出来事は現実に起きたことであり、基本的なプロットも現実のもの。映画は刑務所内での暴動から始まるけれど、そこでドラッグの密売グループが他のグループを殺そうとする―彼らはまた腐敗した警官から援助を受けてもいる―これは本当に起きたことです。それから暴動の中、ディーラーたちと警察の間に立つ人権家が出てきますね。彼はその後で州議員になるのですが、これも現実の話です。この州議員は、ミリシアについての調査をはじめ、議会にもミリシアの調査に乗り出すよう説得しますが、ジャーナリストが彼らに殺されるまでは実現しない。これもまた事実。だからほとんどが真実だと言っていいのでしょうね」


あらすじ
 特殊部隊BOPEを率いていたナシメントは、暴動が起きた刑務所への強行突入という対応に関してフラガという理想主義に凝り固まった著名な人権活動家から、人殺しだのなんだのと非難を受けてしまう。選挙を控えて世論を気にした州知事は、ナシメントをBOPEから外すことを即断。
 公安部の通信傍受部門へ左遷になったナシメント。BOPEはスラムのギャング掃討を進め、結果を出す。こうしてリオに平和が訪れた…りはしない。
これまで生かさず殺さず温存していたギャングの密売人たちと癒着し、金儲けしていたロシェ、ファビオら汚職警官たちは、干上がったギャングとの結託に見切りをつけ、自らが居座ってスラムの人々から「税」という名目でお金を絞り上げる。こうして私利私欲でとことん腐った警官どもはギャングも真っ青の暴力外道集団「ミリシア」を結成する。
人気テレビ司会者から政界入りしたフォルトゥナト、公安局長から政界入りしたグアラシー、ジェラーノ州知事の三悪人は、やがてスラムの人々は単なる金ヅルではなく、政治的にも大きな「財産」を持つことに気付く。


社会が悪いからあれほど人が悪くなるのか。
それとも人が悪いからあれほど社会が悪くなるのか。

ドラム缶に詰めて生きたまま焼き殺す描写はゲーム『マックスペイン3』でもあったけど、どうも向こうじゃよくある殺し方らしい。
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