もとまち

ソウル・サバイバーのもとまちのレビュー・感想・評価

ソウル・サバイバー(1984年製作の映画)
3.8
旅客機の墜落事故でたった一人生還した女の元へ、拾い忘れた魂を手に入れるために死神があの手この手で襲いかかる。次々に現れるあの世からの刺客。ヒタヒタと緩慢に迫り来る死の恐怖。何気ない日常の中に異物として映り込む、ただそこにボーっと佇んでいる死者の姿がひたすら恐ろしい。指先から点々と雫が滴り落ちる描写や、ガラス越しに死者がこちらを見ているシーンなどはクラシックな怪談の幽霊そのもの。リミナル・スペースっぽい冷めきった都市風景のチョイスが本当に絶妙で、ビル・廊下・駐車場といったありふれた日常空間に不穏なムードを常に滲ませ、人工物特有の出口の見えない閉塞感がそのまま主人公の抱える死への不安を可視化させている。『恐怖の足跡』の優れた翻案であり、のちの『ファイナル・デスティネーション』あるいはジャパニーズ・ホラーへの橋渡しとなる恐怖映画史の隠れた重要作であることに間違いない。ただ、死者が主人公以外の人間にも危害を加える設定が意味不明で、せっかくの心霊映画的な恐怖感を台無しにしていたのが惜しい。細かな設定をもう少し堅実に練り上げていれば、名作としてもっと高い知名度を得ていたかもしれない。
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