猫脳髄

序曲・13日の金曜日の猫脳髄のレビュー・感想・評価

序曲・13日の金曜日(1981年製作の映画)
3.4
勝手な邦題で"13金"フランチャイズに繰り入れられてしまったが、当然何の関係もない。ちょうど「13日の金曜日 PART2」と同年の公開となったスラッシャー映画である。

ジェフ・リーバーマンはなかなか歯がゆい監督で、「スクワーム」(1976)や「悪魔の凶暴パニック」(同)など、ユニークで捻ったアイディアを盛り込んだ脚本が見事な一方で、低予算も影響しているが、カメラワークを含む演出がそれを十全に表現するに至っていないという、あと一歩の作品が多い。

本作もリーバーマンが脚本に手を入れており、大自然にキャンプに訪れた若者たちが、地元のプアホワイトたちに敵視され、さらには殺人鬼に追い回されるという筋書きは、直接的にはジョン・ブアマン「脱出」(1972)やトビー・フーパ―「悪魔のいけにえ」(1974)を意識する。本作と同年のウォルター・ヒル「サザン・コンフォート/ブラボー小隊恐怖の脱出」とも通底するような、アメリカの暗部に迫るテーマを備えている。

全編をほぼ森林とキャンプサイトのシーンが占め、低予算ながらの工夫があるし、何より、殺人鬼の設定と描写が卓抜である。後者は、観客には手札を見せたうえで、気がつかない犠牲者たちと殺人鬼との接近遭遇をサスペンスとして演出する手法を採用している。ともすればコント然としているが、笑いとサスペンスを同居させること自体は正鵠を射ている。

一方、前者の設定も本作単独だとなかなかの驚きがあるが、奇しくも同年のトム・デ・シモーネ「ヘルナイト」と被ってしまった。ただし、前述のとおり、これも観客には早々に見せる「手札」であり、クライマックスでのサスペンスを盛り上げる伏線としたのは見事といえるだろう。さらに、いわゆるファイナル・ガールと殺人鬼の最後の攻防でも、ちょっとこれまで見たことがない肉弾攻撃で決着する点も印象に残る。

ただ、間延びした会話シーンや、無暗に森の中を行ったり来たりするシーンの連続に加え、露出過多、照明不足でよく見えないカメラワークなど粗っぽいつくりは褒められたものではない。頼れる森林警備隊役のジョージ・ケネディの登場もあまり効果的とはいえず、やはり本作も「あと一歩」な不全感が残ってしまった。
猫脳髄

猫脳髄