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F.L.E.D./フレッドのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

F.L.E.D./フレッド(1996年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

刑務所で囚人生活を送るチャールズ・パイパーとルーク・ドッヂは、暴力事件を起こして手錠で繋がれてしまう。この間に銃を奪った男が看守を射殺、事件で因縁のあるドッヂを殺そうとするので、繋がれたふたりはそのまま逃げる羽目に…。

1996年産のアメリカのアクション映画。
「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーン、「ユージュアル・サスペクツ」のスティーヴン・ボールドウィン出演。
当時、名の知れた2人の主演だが、本作の存在を知らず、初めての鑑賞。
どうやら日本では劇場未公開でビデオスルーだったらしい。

手錠で互いに繋がれた黒人と白人の2人の囚人が脱走するというシチュエーションからして「手錠ままの脱獄」(1958年)のリメイクかと思いきや、中身は別物。
前半は2人の逃走劇、後半は追っ手を交わしながらの陰謀劇。
その構成はハリソン・フォード主演の大ヒット作「逃亡者」(1993年)に似ている。
そして、当初は激しく反目し合いながらも黒人と白人が次第に息の合ったバディに変わっていくというドラマは80~90年代のアクション映画の王道。
異人種による組み合わせでコメディ要素の強いのは、「48時間」(1982年)に近い。

ジタバタする2人のキャラクターは魅力的だ。
ただのPCオタクで、偶然マフィアの犯罪の証拠をコピーしてしまったハッカーのドッヂは、世間知らずで呑気なボケ役。
もうすぐ刑期が終わるのに一緒に逃走する羽目になり、いい迷惑のパイパーはシリアスなツッコミ役。
共通の趣味は映画のようで、いちいち「あの映画ではこうだった」と掛け合いがあるのが映画ファンとしては面白い。

だが、実に90年代っぽいアメリカの娯楽作品。
バディムービーにアクション要素を混ぜ、それなりに深刻な状況の中にコメディ要素も挿入してくる。
やたらとテンポ良くトラブルがやって来るのに、どうもピンチらしいピンチが無い。

トンネル内で列車に遭遇すれば、走って鉄橋から川に飛び込んで助かり、街に逃げ込めば、買い物中の女性に助けられ、匿ってもらう上に親切に服や食べ物も貰うなんて都合が良すぎる。
サルマ・ハエックが本作のヒロインで、警官の夫を失った未亡人。
肝が据わっていて男2人を圧倒するのが笑える。

ドッヂがマフィアとの交渉でピンチになれば、パイパーが二丁拳銃を乱射して助けにきたり、追っ手に追われれば、なぜかドッヂの友人が準備していたバイクに乗って、ドッヂが追っ手の車から逃げるのもタイミングが都合が良すぎる。

パイパーが実は囚人ではなく警官だったというサプライズや、地元の優秀な刑事がFBIを出し抜く推理と活躍を見せたりと賑やかで楽しいのだが、大味な作りで細部にツッコミどころはいろいろある。
サルマハエックとフィッシュバーンが無駄に恋仲になっていくなども、実にありがちな展開。

つまり、誰も死なない、誰も傷つかない、誰も泣かないといった安心安全な王道的なものだ。
そのため世間の評価は高くないが、CGに頼らない生身のスタントや香港ノワールに影響受けた銃撃戦は懐かしく、バイクチェイスなどアクションは個人的には楽しめた。

ラッキーとアンラッキーの連続でコメディにしてしまうか、どちらかが囚われたり、重症を負うようなスリルとサスペンスでシリアスにするか。
どちらかにすれば良かったと思う。
どちらにも振り切れないストーリーは残念ながら平凡な印象。

個人的にはコメディに振り切った方が良かったのではないかと思う。
スティーヴン・ボールドウィンの天然ボケのような演技は良いのだが、「バディもの」は2人の特徴が違えば違うほど面白い。
屈強なローレンス・フィッシュバーンに対して、不潔でメガネで小太りな体型の見た目で「いかにもオタク」を組み合わせたら、もうそれだけで笑えたのに。

面白くなりそうな要素は沢山あるのだが、どうも行き当たりばったりで伏線として活かされていない。
「惜しい」と感じる娯楽作品である。
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