最愛の妻を亡くし、生きる気力を無くして、人との関わりも疎ましくすっかり偏屈になってしまったオーヴェ。妻の元へ行く為にあれこれ自殺を試みるたびに、隣に引っ越してきたパルヴァネ一家の人々によってことごとく阻止される。
自殺を試みるたびに少しずつオーヴェの過去が明らかにされていくという手法。
そしてその度に誰かの為にひと肌脱がなくてはならない羽目に…。
やがて、底抜けに動じないパルヴァネー家や近隣住人との関わりを通じて、少しずつ心を溶かしてゆく。
まぁ良くあるストーリーではあるが、あらゆる所にスパイスが散りばめられていて細かいところにしてやられた感がある。
ひとりぼっちは寂しくはあるけれど、決して不幸ではない。
本当に不幸なのは、誰の役にも立たなく必要とされない人であるということを、教えてくれる。
最後の最後の場面、閉め忘れた門扉を小走りに閉めに来るパルヴァネー家の子の姿がとても良い。
秀作であると思う。