もとまち

仮面の米国のもとまちのレビュー・感想・評価

仮面の米国(1932年製作の映画)
3.8
劇伴ほとんど無しの乾いたリアリズム。鎖を脚に繋がれ、一日中過酷な労働に従事させられる囚人たち。むせ返るような暑さと看守たちの理不尽な暴力。ドキュメンタリー・タッチで描かれる獄中生活は、画面越しに汗と砂埃の臭いが伝わってくるほどの迫力がある。凄まじい刑務所描写のあとには、水遁の術を使った緊迫感溢れる脱獄劇、そして底辺からの成り上がり、メンヘラ美女との出会いと破滅...主人公の半生がスピーディーなテンポで綴られていく。裁判長の木槌→刑務所のハンマーや、ツルハシの打撃と共に経過していくカレンダーなど、大胆かつユニークな時間の省略が素晴らしい。ラストは怒りを爆発させた主人公による怒涛のカーチェイス。崖や橋をダイナマイトで吹き飛ばす激しさは30年代の映画とは思えないほど。最後まで自由を得られなかった男が、「盗むんだ」の一言で闇にフェードアウトしていく結末も無情過ぎて衝撃を受けた。しかもこれが実話って。
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