このレビューはネタバレを含みます
子供とトウモロコシの町ガトリン。
大人は全員殺された。神意によって。
神、その使徒アイザックに傾倒する子供たち。
己の信仰心に従い暴徒と化し、殺人や略奪、紛争や戦争へと発展する例は歴史が証明している。
一番怖いものは何か?幽霊?怪物?神?
否、人間である。
それを証明するかのように、焦点が得体の知れない子供たちから、トウモロコシ畑を焼き払う神にシフトした刹那映画内での恐怖がほぼ消滅した。
雑味のない純真無垢で無知な子供たち。
たからこそ信仰心も強く、モラルも道徳もない。アイデンティティ形成前の人間こそが真の悪魔たりえる存在なのだ。
後半の時代を感じさせるCGは非常にエモーショナル。
古臭いと言えばそれまでだが、今はあの味を出すことが逆に難しい。
バートが車で子供をハネる場面は人形とわかっていてもショッキングであり、ほぼただの事故映像。それだけのインパクトがある。
トウモロコシ畑は全てを呑み込み監視し観客を聖地という名の地獄へ誘う。この迷宮からは出られない。
そう、神を殺す以外には…
神の御心を知る使徒を名乗るアイザック。アイザックに従うNo.2でありながらその残虐性故恐れられているマラカイ。
この二人は統率力と支配力という点で対比され、物語に若干、わずかに、少々の深みを与えている。
子供が無条件に襲ってくる不条理スリラーの体を保っていれば恐怖や絶望は持続したのかもしれない。
だが、原因が神であり、それが実態を持ってしまった瞬間、安易さが際立ち興味が半減する。つまり今作のようなホラーやスリラーにおいて神は物語の推進力を牽引するに値しないのである。