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荒れ狂う河のSIのレビュー・感想・評価

荒れ狂う河(1960年製作の映画)
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2021.10.5
自宅TVにて鑑賞

1930年代。ダム建設のための立ち退きを命じるべく国から緊急派遣された役人である主人公は、最後の拒否者である河に浮かぶ島の老婆に対峙する。老婆の孫娘を寝技で懐柔し、島の黒人たちを高額なダム建設の仕事に従事させ、老婆を孤立させていくも、老婆の島への並々ならぬ思いに共感するようになる。強制ではなく円満の立ち退きを目指すなかで、意地になった老婆の抵抗、孫娘への恋愛衝動、ダム建設従事者のレイシストによる嫌がらせ、強制立ち退きさせようとする老婆の息子たちや保安官に苦しみつつも、レイシストによるリンチから救ってくれた孫娘との結婚を決意した主人公は、老婆の立ち退きに成功するも、翌日に老婆は死んでしまう。

エリア・カザン×モンゴメリー・クリフト。
社会派映画の名作。日本で有名でないのは洪水を扱っているからか。
ダム建設のための立ち退きというどうにもならない悲劇に、安易に解を与えず、板挟みの主人公と共に脚本家が悩む抜いたことが伝わってくるホン。中盤で主人公の目的が変容していくのが秀逸。
ヒロインの婚約者は寝取られているのに主人公に協力的であったり、ヒロインの感情変化に追いつけないところもあるのだが、逆に意外性あり味わい深い。

説得にきた主人公を横目に、老婆が使用人に言うシーン。
「お前のその大事にしている犬を、いくらでも出すから売っておくれ」
「奥さん、それはダメだ。いくら金を積まれても。いくら奥さんでもそんな権利はない」
主人公をちらりとみる老婆。主人公はそこで、自分のしようとしていることのおぞましさに気付く。うますぎる。

エリアカザンの演出は、質実剛健で毎度安定している。
最後はハッピーエンドとは言えない結末で、余韻を残させるのも彼らしい。
冒頭に流れた洪水映像はリアル過ぎた。恐らく実際の映像の使用。

モンゴメリークリフトはこの時既にアル中だったようで、追い込まれていく主人公像によく合っている。
ヒロインのリーレミックは目の芝居が上手い。哀愁漂う姿が非常に綺麗だった。
脇を固めるのはアクの強いオヤジたち、というのもエリア・カザン節。

隠れた名作でした。
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