冷蔵庫とプリンター

結婚クーデターの冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

結婚クーデター(1936年製作の映画)
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スクリューボール、というか超絶魔球コメディ。

さる令嬢(マーナ・ロイ)に名誉毀損で訴えられた新聞社の編集長(スペンサー・トレイシー)は、稀代の人たらし(ウィリアム・パウエル)を令嬢の元へ送り込み、スキャンダルをねたに訴訟を取り下げさせようとする。

ここまではフツーのスクリューボール・コメディって感じだが、ここでスキャンダルをスキャンダルたらしめるために、ウィリアムパウエルをスペンサートレイシーの婚約者ジーンハーロウと一旦結婚させる必要が生じる。。というあたり(割と序盤)から、もう滅茶苦茶で面白い。

まあウィリアム・パウエルとマーナ・ロイは当時人気を博した『影なき男』シリーズの名コンビであるから、二人が「本当の愛」で結ばれるのが当然の帰結であるが、こうなると納得しないのがジーンハーロウ、婚約者トレイシーには無碍にされ続け、さらにはパウエルと結婚させられ、まんまとパウエルに惚れてしまったせいで、その当然の帰結に猛反発する。プロットの軌道が大きく逸れる、この捻りが素晴らしい。

ロマコメでは普通二組のカップルがいたら、映画的スワッピング展開により愛を再確認するオチに至るのだが、今作はパウエルが女性二人とも落としてしまう爆モテ男っぷりを発揮しており、かなり新鮮。
スペンサートレイシーもおかしくて、普通ならラルフベラミーみたいに悲哀を醸し出すところが、ゴシップにしか興味がないせいで、寝取られた婚約者をまだ利用しようとしている。
あまりにもぶっ飛んだ話である。

どうにも収集がつかなくなりかけたところで、超強引に無理矢理ミットに収めるラストの破天荒ぶりも天晴れ。