櫻イミト

呪われたレイプ魔の櫻イミトのレビュー・感想・評価

呪われたレイプ魔(1973年製作の映画)
3.5
ユーロ・トラッシュ映画界でカルト化しているフランスの吸血ホラー監督ジャン・ローラン。その作品群の中でも日本での人気が高い低予算アート・ホラー。原題は「LES DEMONIAQUES(悪魔主義者たち)」。

19世紀末の北欧。寂れた港町を根城にする男女4人組の残忍な海賊団がいた。ある夜、難破させた船で財宝をあさっているところで生存者の少女二人を見つけ、無慈悲に凌辱し殺害する。しかし少女たちは蘇り、女ピエロに導かれて廃墟となった修道院の墓守の元へ案内される。少女たちが復讐を望んでいることを知った墓守は「ここに幽閉された悪魔と交われば大きな力を得られる」と告げる。。。

岩の海岸と少女二人。燃える廃船と少女二人。修道院廃墟と少女二人。この三種のビジュアルを実現するために、ストーリーをとって付けたような映画だった。他は撮影も俳優もC級ポルノのレベル。

ただし三種のビジュアルには強力な耽美性があり捨て置けないものがある。中でも廃墟ロケーションは実に素晴らしく、そこに裸体の少女二人を置いた映像は好事家にとってたまらないものがある。

修道院廃墟と言えば思い浮かぶのがタルコフスキー監督「ノスタルジア」(1983)だが、本作はその10年前の作品であり廃墟趣味としては遥かに先駆けている。ローラン監督は本作のコンセプトを“少年時代に観た海賊映画と原風景”と語っていて、そのテーマまでタルコフスキー監督に先駆けているのは注目しておきたい。両監督それぞれの感性でドイツ浪漫派画家フリードリヒの廃墟美学を詩的に表現しているが、本作の製作予算は同作の100分の1にも満たないだろうから、それでこの映像を実現したローラン監督の快挙は称賛しても良いだろう。

作品全体としてはあまり期待できないかもしれないが、他にも傑出したシーンが秘められていそうなローラン監督作。もう少し追いかけてみたいと思う。

※本作ロケ地となった廃墟はベルギーの観光名所となっているヴィレール大修道院(12世紀に建築)。ちなみに「ノスタルジア」のロケ地はイタリア・トスカーナ地方の観光名所サン・ガルガーノ修道院(13世紀に建築)。
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