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新・蘭の女/ブルームービー・ブルーのotomisanのレビュー・感想・評価

3.9
 ふたりでナニする前に盛り上がっちゃおう、みたいなつもりで見ると後でカノ女の反りの合わない部分が分かってきたりして、脳みそに回す血流を惜しんだために切られてしまうなんて。
 まむしドリンク追加みたいな程度で済めばいいが、脳みそに血流を回すとしたらどこに注目しようか。それをさておくとしても、マフィアの代わりにLAPDかよとか、ガバナンス不足じゃね?とか娼家運営に異議を覚える向きもあるだろう。しかし、屈託あり気に割れる顎をぶら下げたおさな顔が我勝ちに男を伸して行く感じのニーナが将来大物になりそうな雰囲気で反りの合わない男も山ほどいそうだ。

 そんなニーナ、想像もつかないサリーの後援で、醜業に浸っても我は我とハイスクール・スチューデントに割って入るという勢いだ。しかし同世代で最良のその生活ではあるが実はニーナの束の間の幻影なのかもしれない。
 それは、極端な事であるが、相方ブレンダン青年がはまる'57年刊ケルアックの「路上」に象徴される、若者の意識が変化をかつてなかった何事かとして求めようとしつつある雰囲気として帯びる中、他方でユダヤ系、イタリア系マフィアの動向のラスベガス、キューバ偏重がまだ続いていてLAが等閑視されている事、イタリア系LA一家のボス、ドラグナ死亡のまだ翌年である事が関わるかもしれない。そんな闇の権力のわずかな狭間がほんの1、2年、若者たちに猶予をくれたとすれば、その間にふたりはどうあるべきか?

 このとき、新しい時代が我が道の先にあるような気がしているだけの二人だが、1年、2年先ハイスクール卒業を目前にして見える幻影にお互い相手をどのように置くことになるだろう。ニーナは娼家の主が見越す通り「堅気」の世界を足蹴にして戻ってゆくのか、世間と自分の未知さを悲観せず「路上」をさらに向こうへと道を求めるのか。
 '58年には始まってしまうキューバ革命が必然と予感したマイケルのNY一家が本格的なラスベガス、LA進出に転じるこれから、娼家経営の環境も大きく変わるだろう。将来今日までの独立系を張って行けるだろうか?ニーナの選ぶ主戦場がどちらか。もちろんカリフォルニアのこの娼館で権利を譲られてとなる。なぜって、それはあのニーナの顎が割れるのにふさわしい場所がそこだからだ。
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