空間や時間、そしてその中での人や事や物の転がし方が文字通り「一筋縄」でない。
人や事や物の錯綜が、しかし明示的に一義的に何かを編み上げるという訳でもなく、一体なんなのかと思わせられる細かな描写があちこちにある。
乗り物。自家用車、トラクター、列車、バス、自転車、船、ゴンドラ、ボート、果てはグライダーまで登場で陸海空制覇。
随所で幾度となく繰り返される窓や扉の開閉。窓の向こう側の人の姿。
たまさかに挿入される、不意に現世の人間達の営みから幽離しかかるかの様な緩いパンショット。
監督自身出演の侯爵様の見栄張り捏ち上げ描写は、映画の演出だとてもとよりこうした束の間の捏ち上げなのだという含意なのか。