きゃんちょめ

グレート・ウォリアーズ/欲望の剣のきゃんちょめのレビュー・感想・評価

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ヴァーホーベンの中世観っていいですよね。「キリスト教を信じていますか」という質問に対しては全員YESと答えると思うんですよね。ただ、「どのくらい信じているのか」ということに関しては、ほぼ信じていないやつから一字一句すべてを信じているやつまで、ときには聖書に書いていないことであっても何でも信じてしまっているやつまで、みんな千差万別だと思うんですよ。しかも、実はそうしたキリスト教信仰は見かけだけで、根本では生き残ることが問題になっていて、賢いやつが生き残れる(あるいは生き残れたやつが賢いやつだったということになる)という点では中世も現代も同じだ、というふうに描いていますよね。

アグネスがなぜ最後にマーティンを見逃したのかということを考えると、そもそもマーティンはアグネスがスティーブンを選んだという選択を理解可能なものだと捉えているし、逆にアグネスもスティーブンのような生き方に対して恋愛感情ではないにしろ一定の尊敬を持ったということなのではないかなと思いました。僕は個人的にスティーブンよりもマーティンのほうが遥かに有能であるように見えたので、マーティンがスティーブンに対してあのラストの後でさらに復讐を遂げるということもあり得ると思いました。

いずれにせよ、アグネスはマーティンよりもスティーブンを選び永遠の愛は成就したのだという理解は単純過ぎるような気がします。スティーブンは明らかに無能なので、今後スティーブンがマーティンやあるいは誰か他の有力者に殺されることもありえるだろうし、そのときには、また勝った方につけるようにアグネスはマーティンを殺さなかったように思います。アグネスはマーティンに対しても一定のリスペクトを持っていたように見えました。
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