てる

ダージリン急行のてるのレビュー・感想・評価

ダージリン急行(2007年製作の映画)
3.5
良いロードムービーだった。
始めは兄弟に見えなかった。顔が似てないってのはもちろんだけど、誰が兄貴で誰が弟なのか相関図がわからなかった。本当に兄弟なのかどうかも疑わしいなんて思ってた。しかし、次第に心を通わしていく姿に心が温まる。
凸凹兄弟だ。わがままな兄と各々悩みを抱えた弟たち。この3人が旅行に行くなんて奇跡だ。3人が集まるってのもほぼほぼあり得ないことなのだ。それくらい3人は気が合わない。自分のことで精一杯なのだ。兄弟に心を配るなんてことはあり得ないのだ。そんな3人が生き別れた母に会いに行く。紆余曲折あり、漸く会えた母からは満足のいく説明は貰えなかった。母もまた録でもない人だった。でも、それでもいいのだ。彼等には掛け替えのない兄弟がいるのだ。
きっかけは見知らぬ少年の葬式だ。そこで彼等の中に兄弟や家族の絆が目覚めたのだろう。葬式は彼等の中で重い影を落とす事件だ。それを思い出すことで、彼等に変化があった。凸凹兄弟で手を取り合うことなんてないと思っていた3人が1つのバイクに跨がっている姿に感動した。こうやって仲良くバイクに乗れる兄弟がいたらいいのになんて思ってしまった。少しだけ自分と重ね合わせてしまった。我が家でこんなことは絶対に起きない。だからこそ羨ましいと思った。
最後に荷物を捨て去り、3人で寄り添い合い、列車に乗り込むシーンは良かった。父親や母親とのわだかまりを捨て去り、物欲を捨て去り、爽快な顔の3人は何とも楽しげだった。この3人なら今後何があっても大丈夫だと思った。もしかしたら、今後、3人が集まることはないのかもしれない。それでもこの時の思い出が3人を硬い絆で結んでくれることは間違いない。そう思うとこみ上げてくるものがある。
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