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ダージリン急行のmasuのレビュー・感想・評価

ダージリン急行(2007年製作の映画)
3.2

一年以上顔を合わせていなかった三兄弟が、寝台列車のダージリン急行に乗りインド北陸部を旅する中で、絆を深めていくロードムービー。

ウェス・アンダーソンのメルヘンな世界観で描かれる、インド独特な風景、車内の内装、ファッション、色とりどりの建造物。
どのシーンをとっても、色使いが綺麗で見ているだけで楽しくなる。

ストーリーは、特に大きな見どころは無く、基本的に兄弟の何気ない会話をなんとなく眺めるもの。
映像美とゆるい展開を観ていると、おもわず世界観に浸り、インド旅行を疑似体験している感覚になる。

この映画の中心になっている"ダージリン急行"は人生のメタファーである。
決められた線路を走る列車の中には、様々な人が乗り合わせ、それぞれの人生を生きている。
隣のテーブルにはうるさい貴婦人が座っていたり、時には列車自体が道を間違うこともある。

最後のシーンで、カバンを投げ捨て急行に乗り込むシーンは印象的だった。
過去とは決別できる。
過去を描いていた三男の小説は未来を描くものに変わり、絶縁していた兄弟は絆を取り戻した。

過去のことはカバンに詰め込み投げ捨てて、未来に向かって突き進め!
そういったメッセージを最後のシーンから感じとれた。

エンドロールで、電車視点から流れていく風景を映しながら「オーシャンゼリゼ」のBGMが掛かるのが一番お気に入り。
もちろん舞台はフランスではなく、ばりばりインドなのだが、晴朗な景色ととてもマッチしていて、なんとも爽快な気分になった。
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