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焼け石に水のbennoのレビュー・感想・評価

焼け石に水(2000年製作の映画)
4.3
フランソワ・オゾン監督作品…15作品目…。

これまでオゾンの作品では圧倒的に『スイミング・プール』がお気に入りでしたが…ここに来て、それが覆りました…面白かった〰︎暫定オゾンNo.1…。

ファスビンダー好きとしては…彼が19歳の時に書いた戯曲が原作であるのも一因かもしれませんが…オゾンの映像、演出が冴えまくりです…。

物語は戯曲を生かした舞台仕立てで4幕から成る構成…舞台はアパルトマンの一室…登場人物は4人…彼らの恋愛模様を通してそれぞれの力関係を巧妙に描きます…。


登場人物…
✩︎レオポルド(ベルナルド・ジロード)中年男性
✩︎フランツ(マリック・ジディ)20歳の美青年
✩︎アナ(リュディビィーヌ・サニエ)
             フランツの元恋人
✩︎ヴェラ(アンナ・トムソン)
       性転換したレオポルドの元恋人


第1幕: レオポルドとフランツの出逢い
第2幕: レオポルドとフランツの同棲生活
第3幕: アナがフランツとの関係を復活させる為に訪ねてくる
第4幕: 男性から女性へ性転換手術をしたヴェラが訪ねてくる


出逢い始めは、フランツはレオポルドに対して優位性を感じます…それはふたりの会話のやり取りからレオポルドがフランツに対して気遣っている様子が窺えるから…そんなフランツの思い込みの優越感が一瞬にして崩れる様子がとっても面白い…。

微妙な緊張感のある台詞のやり取りが絶妙です…。

エゴイストなレオポルドのマチズモ的な資質が他の3人の関係を変えていきます…フランツに飽き、アナを支配するようになり…フランツとヴェラはアイデンティティを見失い、孤独感に襲われます… Françoise Hardy の ♪ Traume が彼らの心に重なり切ない…。

バイセクシャルあり、性転換者あり、なかなか一筋縄ではいかないセクシャル・アイデンティティ…関係性も次々と変化…。

恋愛関係に留まらず…あらゆる人間のパワーバランスの本質を描き、とても興味深いです…。

そして、本来、修羅場になるようなシーンで…出た!! オゾン・マジック!! …めちゃ笑いました!!

『スイミングプール』にも出ていたリュディビィーヌもとてもキュート…でも何故、ずっと下着なの??

映像も見事…冒頭では観るものの緊張感を生み出す仕掛けがとても上手い…他にも窓枠を使った映像や雨音の効果音…幕終わりのショットもユーモラスでちょっぴりシニカル…。

そして…開かない窓…

逃れられない堂々巡りの恋愛劇です…。
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