TAK44マグナム

デスマシーンのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

デスマシーン(1994年製作の映画)
3.6
ジョン・カーペンターが!
リドリー・スコットが!
サム・ライミが!


不死身の殺人ロボットから女社長が逃げまくるSFバトルアクション映画。
監督は「ブレイド」のスティーブン・ノリントン。
持ち味であるスタイリッシュな画作りの片鱗がみてとれます。
フィルモグラフィーを覗くと、燦然とジャンル映画がズラっと並ぶB級映画の総大将みたいなブラッド・ドゥーリフや、若い頃のレイチェル・ワイズが出演。レイチェル・ワイズは冒頭にチラッとだけ顔を見せる端役です。


近未来。
巨大企業チャンク社が極秘に開発したハードマンが暴走事故を起こし犠牲者が出るが、会社はそれを隠蔽した。
ハードマンとは、負傷した兵士の記憶を消去、特殊装甲と武器を装備させた、言わば「リサイクルした強化兵士」。
しかも脳に多大な影響を与え、コントロール不能に陥ることから、失敗作であると会社も判断している代物なのであった。

反発した人道団体からの告発によって糾弾される会社を救うために、新任の女性社長ケイラは情報公開を約束し、さらにハードマン計画の開発者であるダンテを解任しようとする。
だが、ダンテは激しく反発し、自らが会社にも秘密で作り上げた殺人ロボット兵器デスマシーンを使って取締役のリドリーを殺害、続いてケイラをも狙う。
はたしてケイラは、デスマシーンの魔の手から逃れる事ができるのであろうか・・・?!


ブッ飛んだキチガイ科学者の歪んだ愛情が気持ち悪い(汗)
よくある、「天才と変態は紙一重」を分かりやす〜く具現化したのが本作に登場するダンテさんです。
殺人やら何やら悪いことばかりしているのに頭が良いからって会社が採用しているんですけれど、「そんな馬鹿な」ですよね。
いくら使えるからって、マッドサイエンティストだと承知した上で権限与えている時点で、この会社のアホさ加減が分かるというものです。

主人公は、このキモい天才から一方的に慕われてしまう美人?社長さんで、実はあるトラウマを抱えているという設定。
でも、あまりこの設定が活かされているとは思えませんでしたね。
彼女は、会社に侵入してきた人道団体の兵士とパーティを組んで、ダンテの陰謀を阻止しようと頑張る羽目になっちゃいます。

全体的に「ロボコップ」風味のダサ格好良い世界観でありまして、舞台を本社ビル内に限定した必殺の低予算仕様。
出てくるガジェットはそれっぽいものもありますが、未だにフロッピーディスクやビデオテープを使っていたり携帯電話も登場しないなど、80〜90年代に大量生産された近未来モノの埋もれた一作と言えるでしょう。
しかしながら、ドライヴ感に満ちた演出が本作特有の空気を生み出していて、なんだかよく分からない存在感をもった一本に仕上がっていると思います。
ものすごく面白いわけではないけれど、エッジの効いた雰囲気が独特で、それが調味料となって映画にケレン味を与えております。

タイトルにもなっているデスマシーンとは、ダンテがリモコン操作する、今風に言えばドローン兵器。
ダンテの趣味なのか銃器で武装はせずに(その割に自身は銃器を大量に所持する癖があり、それがギャグとして使われている)、やたらガチャガチャ動く鋼鉄の牙が生えた頭と鋭く尖った爪でターゲットを惨殺します。
なので、デスマシーンの襲撃場面は何となくホラー映画っぽいです。スプラッターと言うほどではありませんが、軽く血だらけになります。
また、こいつがタミヤの工作キットで作った玩具の恐竜みたいな外見なのに、何百メートルも落下したり、何百発も銃撃されたり、何度も爆破されても平気な顔しているスーパータフネスなロボットなので、迫る様子はまるでターミネーター(人が発する恐怖心を捉えて追跡する機能つき)の如きです。

ターミネーターといえばジェームズ・キャメロンですが、本作はやたらめったらSFやホラー系の映画人の名前が出てくるのも特徴。
登場人物の役名からしてライミとかスコット、ジョン・カーペンター(笑)。
更に、「エイリアン」に出てくるウェイランド・ユタニ社も役名として使われていたりします。
で、キャメロン関係ですが、ハードマンとなる兵士に「アイル・ビー・バック」と言わせてみたり、台詞にスタローンの名前が出てきたり。「ランボー/怒りの脱出」の脚本はキャメロンですものね。
非常にわかりやすいリスペクトの仕方が微笑ましいです。

デスマシーンに対抗するためにケイラたちが使う切り札がハードマン。
壊滅的な欠点があっても頼りざる負えない強化兵士です。
強いのか弱いのか、いまいちよく分からないのですが、この映画自体、実はよく分からないので無問題でしょう(苦笑)。

なんというか、ストーリーにしても、人物描写にしても、尺が豊富な割には説明不足で何が何だか理解し辛いところがあるんですね。
意味不明だったり無駄なカットが多いし、アクションシーンになるとカット割が細かいこともあって何がおきているのか把握し難い。
時折、「お!」と思う格好良いカットがあったりする反面、せっかくのデスマシーンやハードマンのダサ格好良さがスポイルされ気味なのが勿体ないと思いました。

勢いはあっても余韻が感じられないラストは、もっとちゃんとダンテとデスマシーンの最期を見せて欲しかったかもしれません。

「なんじゃこりゃ!」と、デスマシーンの容姿と活躍に驚きたい方、そしてサンシャイン池崎ばりにハイテンションなハードマンを愛しいと感じられる奇特な方にこそオススメしたい90年代が遺した珍品SF、機会がありましたらご賞味あれ。