horahuki

コフィン・ジョーの おまえの死体も乗っ取るぜ!!!のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.7
私は死ねない!!
子供が生まれるまでは…

子供大好きなコフィンジョー先生は、自分の子を産ませるために6人の女を誘拐&監禁。蜘蛛と蛇を使って花嫁選抜試験を始めたんだけど、良い人いなかったのでアッサリ殺害。地獄行ったり邪魔な村人殺したりしながら花嫁探しに奔走する子作りホラー。

ブラジル初のホラー映画とされている『コフィン・ジョーのお前の魂、いただくぜ!!!』の続編。せっかくボックス買ったのに1本だけ見て1年半放置しちゃったので、消化のために鑑賞!

キリスト教への信仰が深く根付いていた当時のブラジル社会に対する反骨精神溢れる反キリスト教映画。コフィンジョー先生の持論をここぞとばかりに説教するシーンが非常に多く、まともな事とわけわからん事をごちゃ混ぜに喋り続けるジョー先生を見てるだけで楽しい作品でした。

コフィンジョーが暮らす村ではジョー以外はみんな当然キリスト教徒。異教徒であるジョーを悪魔とみなし、誰もがその存在を恐れている。信仰の押し付けによってヒトを平均化しようとするキリスト教側の侵略者としての要素を描き、そうでない者の排除や脅迫に近い同調圧力を批判するような内容でありながら、ジョー先生がド畜生なので、どっちもどっちやん!って感じで楽しく見れるアホらしさが好き。

やってることは前作に近いのですが、前作の大ヒットで予算が大幅に上がったために、約10分を使い様々な責め苦を受ける人々が蠢く中をジョー先生が進む地獄めぐりが最大の見どころとなっています。

本作はモノクロ作品でありながら、地獄だけはカラーになっていて、赤、緑、青、黄と照明を切り替えながら地面や天井に埋め込まれた無数の人の顔が呻き声を上げ、壁から伸びる腕と足が蠢き、鬼のような人が磔にされた人に銛や斧を使って拷問をするという異様な光景を嫌悪感たっぷりに描き出しています。

ここはジョーの中で膨らむ信仰の揺らぎを心の弱さとして具現化したシーンなのですが、揺らぎを理性で押し込めようとするジョーの内面での戦いが表現されていて良かったです。

キャラクタをトラッキングしていたカメラがそのままシームレスに殺人鬼の視点へと切り替わるジャーロのような演出や、セットゆえの黒の濃い背景を最大限に活かしたコントラストが際立つ映像と窓からの光をバックに漆黒の悪魔が襲い来る逸脱による気味の悪さが印象的。演出にスマートさはあまり感じなかったのですが、マリンズ監督のメッセージを強烈に感じるストレートなパワーを感じさせる内容でした。

ちなみに本作の女優陣のオーディションでは蛇や蜘蛛に耐えられる女性を…ということでマジモノと戯れさせたようで、花嫁選抜試験はオーディションをそのまま反映してのだなって考えると面白いです。ラストのジョーの言葉は「はぁ?」ってなるのですが、本来は正反対の言葉を叫んでいたらしく、会社から差替えを命じられてあんなことになったよう…。キリスト教に追い詰められるジョーを現実がそのまま体現したかのような面白いエピソード!ただ、どこまでが差替えなのか不明で、意図が読み取りづらいのが難点…。
horahuki

horahuki