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愛の泉のodyssのレビュー・感想・評価

愛の泉(1954年製作の映画)
3.2
【『ローマの休日』の影で】

1954年製作のアメリカ映画で、ローマが舞台というと、すぐ思い出されるのが前年製作の『ローマの休日』。この名作がローマを舞台に、その名所旧跡を盛り込みながら、王女様と新聞記者のかなわぬ恋を描いていることは改めて言うまでもありませんが、こちらの『愛の泉』は三組の男女(女は三人ともアメリカ人という設定)がローマで恋愛をして三組ともめでたく結ばれる、という筋書きです。

というと、『ローマの休日』とは全然違うじゃないかと思われるかも知れませんが、そして『ローマの休日』がモノクロだったのにこちらはカラーという違いはありますが、どことなく似通っているのです。スペイン広場など『ローマの休日』でもおなじみの名所が出てくること、ヒロインの一人マリアを演じるマギー・マクナマラが小柄でどことなくヘップバーンに似ていることなど。ちなみに彼女はイタリアの名門家の青年公爵に恋をします。言うならば玉の輿で、『ローマの休日』が逆玉(?)だったのと正反対ながら、結局は身分差の恋ということでは同じ。しかも『愛の泉』ではハッピーエンドですし、民主主義の精神が活かされているとも言えるでしょう(笑)。

要するに、この映画は肩肘張って見るようなものではないのです。気軽に、飲み食いしたりしながらついでに楽しめばいい。見どころはあくまでローマの名所旧跡やいかにも年季の入った建物やその内部、そしてそれを背景とした軽い恋の物語なのですから。

それに最後のまとめ方が、良く言えば予定調和的、悪く言えば強引で、まあこういう終わり方しかないだろうとは思うものの、もうすこし手間暇かけられなかったのかな、という気持ちもしてきますが、終わり良ければすべて良しということで、野暮は言いっこなしにしましょうね。
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