Omizu

愛の泉のOmizuのレビュー・感想・評価

愛の泉(1954年製作の映画)
3.6
【第27回アカデミー賞 撮影賞、歌曲賞受賞】
『百万長者と結婚する方法』ジーン・ネグレスコ監督作品。ローマで秘書として働く三人の女性を描き、「トレヴィの泉」を一躍有名にした作品としても知られる。アカデミー賞では作品賞他全3部門にノミネートされ、撮影賞(カラー)と歌曲賞を受賞した。

まぁよくある観光ロマンティック・コメディなのだが、普通によくできていて面白い映画だった。『ジョニー・ベリンダ』でみせたネグレスコの演出手腕が光る秀作。

原題は「Three Coins in the Fountain」であり、「泉の中の3つのコイン」と訳せる。序盤に三人の女性たちがトレヴィの泉に投げるコインのことを指している。

三人の女性がそれぞれに運命の相手をみつけるまでの物語。それだけ聞くとよくある話だし、実際その範疇からはみ出したものはない。定形通りのロマンティック・コメディではあるが、観光映画としてよく出来ている。トレヴィの泉だけでなくローマの街並み、ヴェニスの風景などを見ているだけでイタリアに行きたくなる。まぁ風景は別撮りなのは丸わかりなのだが…

ネグレスコ監督の『ジョニー・ベリンダ』は非常に厳しく強烈な話であり語り口であったが、それはマリアの物語に現われている。正直上手く丸く収めているがマリアのやり口は怖い。狙った男の情報を仕入れて男を狩るというようなやり方がなんかすごい。そこまでするかというやり口。そういう話ではないのに人間の怖さという要素が垣間見えるという点で『ジョニー・ベリンダ』との共通点が見出せる気がした。ネグレスコ監督、なかなか辛辣。

よくあるロマンス映画の域ではあり、定形通りのハッピーエンドに落ち着く。しかし何か人間の底知れなさを感じる映画であった。登場人物の描きこみがなかなかに鋭く、侮れない作品。地味なキャストではあるが、俳優の演技もいい。ネグレスコ監督の鋭い観察眼が光る秀作。
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