映画スニーカー図鑑

ロスト・キッズの映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

ロスト・キッズ(2002年製作の映画)
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Nike Blazer Mid 77 (主人公:カルビンが着用。シュータンの裏に“MJ"と書かれた魔法のスニーカー)
Nike Air Jordan 9 Retro “Space Jam” (トレイシーが着用)
Nike Air Podposite (カルビンが着用。チームが元々用意していたシューズ)

 2002年公開のキッズ・ムービー『Like Mike』。シリアルのCMみたいな95分だが、妙に憎めない作品だ。バスケ映画に残念な邦題が付くのはご愛嬌ではあるものの、本作の日本配給はかなりタチが悪い。日本版ポスターからはバスケの気配を感じるものを完全に排除、代わりにクライマックスの電動キックボード・チェイスを前面に出して『グーニーズ』的なキッズ・アドベンチャー感を演出している。ナイキのロゴ問題から、登場しない架空スニーカーを合成するしかない事情は理解できるが、それを掲げているように見える後ろのラスボス風の包帯マスク男は、本編の該当シーンでは子供たちにテープでグルグル巻きにされた、悪徳孤児院の職員だ。じゃあ一体、誰の手なんだよそれは。完全に本編と関係のない内容をでっち上げたトンデモ詐欺ポスターだが、極め付けは、NBAという圧倒的に有色人種のスターで支えられている世界がテーマで、必然的に黒人中心のキャスティングになっている作品であるにも関わらず、相棒キャラの白人少年を中央に据えて、主演のバウ・ワウを脇に追いやるという徹底ぶりだ。レイシストどもめ!
 それはともかく、あらすじは極めてシンプル。孤児院に暮らす少年が魔法のスニーカーを手に入れ、NBAスターになり大活躍、遂には理想の里親まで手にいれる、というサクセス・ストーリーだ。なんと言ったって子役時代のブレンダ・ソングとジェシー・プレモンスがキュートなのだが、対してバウ・ワウ演じる主人公:カルビンはハッキリとクソガキだ(念のため、バウ・ワウには何の非もない)。何故イジメられているのか分からないほど堂々としていて、ハンサムで、お調子者で、ラップもできて、シュートするときに舌を出す、清々しいほどの生意気さ。正直、里親が居なくたって自分で何とかやっていけそうな図太さなのだが、そんなカルビン君が魔法のスニーカーによって“NBAに突如現れた神童”と崇められる。靴の秘密を隠し通そうと悪戦苦闘したり、盗まれたり、スポンサーから怒られたり...といった試練を乗り越えることは大してないまま(いや、あるにはあるんだがあまりに盛り上がらないのだ)、あれよあれよと成功を重ねていく。映画は小説以上に客観的な位置にカメラが置かれるメディアの性質上、主人公があまりに上手く行き過ぎるとストレスフルに感じるもの。本作の一番の見どころは主人公の成功話より、カルビンの世話役を押し付けられたチームメイト:トレイシー(モリス・チェスナット、『ボーイズ'ン・ザ・フッド』のリッキーだ!)が、生意気なガキに振り回される様子だ。演者の心底鬱陶しそうな表情が絶品なのだが、トレイシーは次第にカルビンと打ち解けていって、良い兄貴分になっていく。牧歌的なプールサイドのペイント・ファイトのシーンなんて青春映画のような水々しさで非常に良いのだが、最終的には想像通り、カルビン(とオマケの白人少年)を養子に迎えて擬似親子に回収される。アメリカって日本以上に養子縁組の審査とか厳しそうだけど、家を不在にしがちの片親でもセレブなら問題ないのか?


衣装デザイン:Mary Jane Fort
登場・コラボ:登場のみ