猫脳髄

黒騎士のえじきの猫脳髄のレビュー・感想・評価

黒騎士のえじき(1973年製作の映画)
2.8
年末年始ユーロ・ゾンビ特集7/7~スペイン編②

せっかくのユーロ・ゾンビ特集がポール・ナッシーで終わってしまうのは忸怩たる思いがあるが、ネタが切れたので致し方ない。レオン・クリモフスキー「ゾンビの怒り」と同年公開だが、本作の製作が1年ほど早く、塩漬けにされていたらしい。またもナッシーがコスプレ姿で2役をこなし、相変わらず女性とベタベタする厭らしさがあるが、ゴシック調のゾンビ映画としての体裁は保っている。

今回の舞台はフランスで、15世紀の魔女裁判で処刑された「黒騎士」なる人物が、夫婦ともども子孫らを通じて復活を遂げようと画策するという筋書き。ナッシーは黒騎士と、札びらで頬をはたくタイプで女に見境がないその子孫という2役を演じる。田舎の邸宅に立てこもり、寄せては返す黒騎士勢力との攻防はジョージ・A・ロメロ「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(1968)、ゴシック悪党の復活劇はマリオ・バーヴァ「血塗られた墓標」(1960)あたりからの影響が伺える。

ただ、サスペンスの醸成という「我慢強さ」に欠けており、生者を操ってみたり、ゾンビ(※)を繰り出してみたり、はたまた夫婦ともども攻め込んでみたりと一所懸命だが、それぞれがワン・シークエンスで終わってしまい単調さが強調される。一方で、ゴア表現は比較的頑張っており、人体破壊表現などもそこそこの水準に達している。

要は、ポール・ナッシーはサーヴィス精神旺盛なのだろう。生首姿にリアリティを出すために、カットを細かく割ってナッシー自身が演じるなど、ややマジック・ショーじみてはいるが、努力の形跡はある。ホラーである前に、まずもって映画は娯楽であることを優先した結果だろう。ユーロトラッシュ、エクスプロイテーション映画の帝王たるゆえんである。

※このゾンビはどこかで見たゾと思ったら、ユージニオ・マーティン「ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行」(1972)と同じ特殊効果・メイク担当とのこと
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