TAK44マグナム

核戦士シャノンのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

核戦士シャノン(1983年製作の映画)
3.7
俺たちの戦いはこれからだ!


イタリアのロジャー・コーマンみたいな人、ジョー・ダマトが手掛けた近未来アクション。
マッドマックス以後、無数に作られた世紀末的ヒャッハー!なフォロワーのうちの一本ですね。
主役のシャノンを演じるのは、「サンゲリア」で止せばいいのにゾンビの島に行ってしまうカップルの男役だったアル・クライヴァー。


よく分かりませんが核戦争後のどこかの街。
そこで繰り広げられる(主に髭面の)男たちの戦い、そして忘れた頃に無駄にこんにちは!するオッパイ。
詳しい世界観の説明が無いのですが、偉そうなオジさんたちが「何とかしないといかん!」と話し合っています。
ただ、最後までよく意味が分かりません。
分かることは2つだけ。
どうやら放射能の影響で超能力を持つに至ったミュータントたちを脅威に感じたオジさんたちが、強力な治安警察を使ってミュータント弾圧を行なっている事と、人々が熱狂しているのが無敵のチャンピオンであるロン・シャノンが凄腕ハンターに追われるテレビ番組のデスゲームだって事。

序盤のデスゲームで主人公シャノンの強さを描写(その割にライバルのカートに殺されそうだったけど)、しかし早々にデスゲームは終了。
あとはミュータントの女性リリスに「安全な場所」まで連れて行く仕事を頼まれたシャノンが仲間を募り、危険な外の世界を無骨にも程がある車やバイクで走り回るマカロニマッドマックスな展開になります。
つまり本作は、X- MENとバトルランナーを足して二で割ったら、結果的にマッドマックス風の荒野の七人になったよって感じのポンチャン映画なのです。
だって、イタリアだから!


馴染みの格闘ジムトレーナー、ブル。
ブルのジムに通っていた殺人空手の使い手、ニンジャ。
反射神経が鋭いカジャマ。
山のフドウみたいなコーバック。
以上4人の仲間を報酬の黄金で釣ったシャノンは、300キロ離れた地を目指します。
しかし、街の外はまさしく無法地帯。
視力を失ったキチガイ集団や、分かりやすくヒャッハー!な悪党軍団が次々と来襲!
この世界では殺るか殺られるかなのです!
勿論、黙って殺られるシャノン達ではありません。
反撃開始であります!

目の見えない集団に捕まって目の代わりをさせられていたミュータントを助けるのかと思ったら、ここでシャノンが躊躇なくとる行動がドイヒーなので必見。
シャノンはヒーローですが、別に聖人では無いのでした。

マスクをとったヒューマンガス様からカリスマ性も剥ぎ取り、更に10倍バカにしたようなボスが率いるバイカー軍団との死闘では無敵と思われたニンジャでさえ、まさかの特攻死!
シャノンのチームはボロボロ状態にされ、リリスが拉致されてしまいます。
残ったシャノンとブルが「どーすんべか」と思っていたら、いつの間にか仲間面でやって来たカートが一緒にリリス救出に行ってくれるのでした。
「夜を待とう」などと悠長なことを言っている間に、リリスはボスにレイプされ、その貞操を捧げる羽目に。
オッパイありのサービスシーンですが、あっという間に終了。
それでも、どうにかこうにかリリスを助け出したシャノンは、敵に囲まれたカートを残してブルと合流、ついに約束の地点に到着します。
だがしかし!
そんな簡単にことが運ぶ筈もなく、追尾してきた治安警察の大部隊に退路を断たれてしまいます。
もはや絶体絶命!
はたして、シャノンに起死回生のチャンスは残されているのでしょうか?

・・・いや、そりゃ残されていなくちゃ全員憤死で終わって、「なんだ、この映画!」とスクリーンに火をつけたり、VHSからテープをビロビロ〜ンと引き出したり、DVDを手裏剣代わりに投げたくなってしまいますから、ちゃんと切り札があるので御安心下さい。

さてさて、このクライマックス。絵面を観るかぎり、核戦士(←そういえば、この邦題からして理解不能)シャノンは殆ど何もしません。
ただ、突っ立っているだけ!
それでも、治安警察の方々は撃ち殺され、吹っ飛び、火あぶりにされちゃいますよ!
シャノンが何もしなくても、サイコキネシスパワー全開な、AKIRAみたいな少年がいたからです!

う〜む。
そりゃ、確かにシャノンが口八丁で覚醒させなければミュータント少年のパワーは解放されなかったでしょうが、ヒーローがボ〜と立っているだけで敵が勝手に死んでゆくっていう絵面はクライマックスとしてどうなのだろうか(汗)
面白いけれど。


そんなわけで、どうせトラッシュ映画でしょう?
などと思うのも否めない激安映画ではありますが、意外とエキストラがワラワラと出てきたり、派手に爆発して吹っ飛んだり、くだらん学芸会だろなどと舐めてかかると火傷する本気仕様。
リリスのテレパシーを受けて戦うシャノンなど、そのサイキックな描写も地味ながらマンガを無理なく実写にしたかのようで分かりやすいです。
冒頭のデスゲームや、ガスマスクの治安部隊が横一列で銃を掃射してミュータントを排除するカット(「人狼」みたいで格好良い)は、もしかしたら後年に影響を与えているかもしれませんし、全く与えていないかもしれません。

「君たちは未来だが俺は過去なんだ」というラストのセリフや、ジョン・カーペンターを思わせるダウナーなシンセミュージックも最高だし、全体的にテンポが良く、お客にサービスしようという気概がうまい方向に作用した佳作だと思います。

ちなみに、ニンジャ役のアル・ヤマノウチは生粋の日本人でありますがイタリアに帰化した方でして、俳優や振付師として大成、本作のようなマカロニ何ちゃって映画で東洋人役を数多く怪演し、
近年では「ウルヴァリン:
SAMURAI」のような大作にも出演しています。
渡辺謙や役所広司のイタリア語吹き替えも担当されているとの事です。


某動画サイトにて