タチユロ氏

不安は魂を食いつくす/不安と魂のタチユロ氏のレビュー・感想・評価

4.0
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選にて。

ストーリーの構造は典型的なメロドラマ。
初老の掃除婦エミは、モロッコ人の労働者アリと出会い、互いの孤独を分かち合う友人となる。やがて二人は結婚し、幸せな生活を始めるが世間の風当たりは厳しい…

“差別”と“世間体”というものに首を絞められるような息苦しい話だ。アリを愛したエミは「外国人の若い男と結婚した」という誹りや冷たい世間の目も突っぱねて孤立していく。そうすればするほどストレスがかかっていく。

かといって世間に迎合して、できるだけ感じ良く暮らそうとすると、今度はアリの方に負荷がかかる。ドイツ人たちに気に入られるように理想的なアラビア人であり続けるというのは、形を変えた隷属でしかないじゃないか。

こういうまさにストレスで胃に穴が開くようなメロドラマだ。
ファスビンダーをはじめとするドイツ映画を見ているとよく感じるのだが、ドイツって嫌なところが日本によく似てる…。日本も“世間体”を建前にして同調圧力的に“差別”をする局面が多々ある国だと思う。だから、この映画の息苦しさは実感を伴う。
タチユロ氏

タチユロ氏